研究課題/領域番号 |
19K08459
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
志賀 永嗣 東北大学, 大学病院, 助教 (20583355)
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研究分担者 |
角田 洋一 東北大学, 大学病院, 助教 (50509205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チオプリン / NUDT15 |
研究実績の概要 |
被験者赤血球を使った6TGTP/6TGMP比算出によるNUDT15酵素活性評価の実現可能性評価をった。まず、6TGTP/TGMPの測定系を確立するため、標準物質を用いてLC/MSによる測定系の検討を開始した。分析カラム・移動相などの設定条件を複数設定しクロマトグラムの結果から、適切な条件を確定できた。 その後、NUDT15コドン139の遺伝子型(Arg/Arg,Arg/Cys,Cys/Cys)の各1名ずつの被験者から採血を行い、赤血球成分を分離氷冷し、6TGTPを添加、37℃で15-120分での各種タイムポイントを設定しインキュベーションを行い、検体を氷冷。徐タンパク、撹拌・遠心・上清分取後後窒素乾固後、水200μLに再溶解しLC/MSによる測定を行った。 その結果、6TGMPの生成量は、インキュベート15分後から、遺伝子型別に有意差をみとめ、特に、リスクホモ群(Cys/Cys)群では、ワイルドタイプ(Arg/Arg)に比較し、有意に6TGMP生成量が減少していた(試行回数3回、p<0.01)。また、同様の有意差が、30分、60分、120分でも確認された。一方で、TGTPの減少量は予想に反して3群で有意差を確認できなかった。 以上から、NUDT15活性の測定としてヒトからの採血検体で、コドン139による活性の違いは検出できる可能性が示唆された。ただし、6TGMPの増加、6TGTPの減少、あるいはその比のいずれを使用するべきかは今後検体数を増やした検討が必要と考えられた。また、条件設定にはまだ検証すべき部分がおおいため、条件の検証も必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り実験系の確立に成功し、測定ができる可能性を示すことができた。この結果が得られたことで、次年度以降の計画を予定通り進めることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定に従い、酵素活性評価プロトタイプのバリデーションをおこなう。多数の検体を測定する場合には、検体の処理や管理などをできる限り簡便にし、測定結果が安定する方法を検討する必要があるため、以下のことについて条件を変えて検討し、実現可能な検査プロトコルを確定する。採血後、赤血球分離までの放置時間の影響評価、放置時間の評価(直後、30分、1時間、3時間)、放置温度の評価(冷蔵 4℃、室温)を行う。将来的に受託検査にするため病院での負担を最小化するため、一度冷蔵し搬送後に赤血球分離した場合の評価、遠心もせず、血漿ごと-70℃凍結した場合の評価を行う。このうちの最適法にて1被験者あたり5検体、3名被験者による、日内、日間再現性を確認する。 最後に、複数被験者を使った酵素活性評価法の妥当性評価を行う。開発した酵素活性評価系が被験者の副作用を反映しているか評価する。おそらく、主要なR139C遺伝子型との相関は確認できると予想されるが、たとえば稀な遺伝子型では活性測定結果がどうなるか、さらにR139Cの多型症例も含め、酵素活性測定結果が実際に副作用とどう関係するかを検討し、臨床検査としての有用性を明確にする。対象は過去にチオプリン服用歴があるが現在は服用していない炎症性腸疾患患者100名で、NUDT15遺伝子多型解析をしたうえで、酵素活性を測定する。以上の測定結果と、過去のチオプリン服用時の 副作用との比較、評価を行い、本新規酵素活性測定法の臨床的有用性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の検体の測定を次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。次年度での測定で使用する消耗品費として使用する予定である。
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