研究実績の概要 |
本研究では、NUDT15遺伝子のコドン139多型がArg/Arg, Arg/Cys, Cys/Cysである健常人から採取した赤血球検体を対象に、6-TGTPを添加しインキュベートさせ、LC/MSで6-TGMP生成量を測定することで、NUDT15の酵素活性を推定できるかを検討した。 当初、インキュベート時間が15分、30分、60分、120分それぞれにおいて、Arg/Arg, Arg/Cys, Cys/Cysの順に活性は低下していることが確認された。また、日内再現性及び日間再現性の確認として3被験者を対象に、3日間、1日あたり5回測定を行った。6-TGMP, 6-TGTPのそれぞれの量にばらつきを認めたものの、6-TGMP/6-TGTP比を用いた場合にはほぼ同等の遺伝子型による測定値の違いが確認できた。 最終年度には検体の保存時間による変動を検討した。コドン139多型がArg/Argである赤血球検体を用い、検体採取から凍結までの保存時間による測定値の安定性を検討したところ、室温保存では9時間及び24時間放置の検体で6-TGMP/6-TGTP比が80 %を下回る結果となり、測定値は不安定となった。コドン139多型がArg/Argである凍結保存後赤血球検体を、インキュベート前に室温及び冷蔵で保存し、測定値の安定性を検討したところ、室温保存では4時間保存の場合に6-TGMP/6-TGTP比が60.3%、60.9%、24時間保存の場合に17.7%、15.8%と測定結果が不安定となった。冷蔵保存した検体は24時間保存で80%を下回り測定結果が不安定となった。 このように本手法では、遺伝子型別での酵素活性の違いを比較で検出することは可能であったが、絶対値としての安定性がなく、検体の採取から測定までの管理で容易に結果が変動することが明らかとなった。
|