研究課題/領域番号 |
19K08460
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石毛 和紀 筑波大学, 医学医療系, 客員研究員 (20597918)
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研究分担者 |
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NASH肝発癌 / p62 / Nrf2 / 臓器連関 |
研究実績の概要 |
Nrf2およびp62のNASH肝癌と進行における役割を,動物モデルおよびヒト臨床標本を用いて明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を実施した. ①全身でp62およびNrf2遺伝子が二重欠損するp62KI/KI/Nrf2-/-(DKO)マウスと組織特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウス(Albumin-Cre,Adipoq-Cre,Lyz2-Cre)を交配することにより,Nrf2遺伝子を全身で欠失しながら,それぞれ肝細胞,脂肪細胞,マクロファージ/肝Kupffer細胞にのみ特異的にp62を発現するレスキューマウスを作製し,これらのマウスに60%高脂肪食を26週間摂餌させ,NASH病態および肝癌発生について比較検討した. 組織細胞特異的p62レスキューは,マウスの体重変化に影響を与えず,DKOマウスと同様に高度の肥満を呈した.脂肪細胞およびマクロファージ/肝Kupffer細胞のp62レスキューは,肝病理のsteatosis activity fibrosis(SAF)scoreによるNASH病態評価において,DKOマウスと同程度の重症NASHを発症したが,肝細胞のp62レスキューは,NASHの炎症と線維化を軽減し,肝癌の発生率を30%から14%に低下させた.この結果から,特に肝細胞のp62発現がNASHと肝癌発生に対する防御に重要な役割を果たしていると推測された. ②ヒトNASH肝癌50例,慢性C型肝炎肝癌49例,大腸癌肝転移48例(正常肝対照)の臨床標本についてp62の免疫染色を行い,患者の病歴情報と比較解析を行った. ヒト臨床標本の解析では,非癌部でのp62の染色強度と局在は,肝炎症および肝線維化と有意な関連が認められた一方,癌部でのp62の発現強度と局在は,癌の病理学的な悪性度やT因子,腫瘍マーカーなどと関連しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全身Nrf2およびp62遺伝子欠失マウスをベースとした,肝細胞特異的p62遺伝子レスキューマウス,脂肪細胞特異的p62遺伝子レスキューマウス,マクロファージ/肝Kupffer細胞特異的p62遺伝子レスキューマウスについて繁殖と高脂肪食摂餌が完了した.しかし,遺伝子改変によりマウスの繁殖力が予想以上に低下したため,Nrf2遺伝子のレスキューマウス作製の進行が遅延しており,更に,新型コロナウイルスの影響により,一時期動物実験が制限されたことによる遅延が重なった. ヒト臨床標本については,p62の他,Keap1,LC3A,multi-ubiquitinなどの免疫染色実験は完了し,現在臨床情報との統計解析を行っている.ただし,Nrf2については,免疫染色が成功しておらず,抗体を変えて条件検討を継続している.
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今後の研究の推進方策 |
【動物実験】全身Nrf2およびp62遺伝子欠失マウスをベースとして作製した,肝細胞特異的p62遺伝子レスキューマウス,脂肪細胞特異的p62遺伝子レスキューマウス,マクロファージ/肝Kupffer細胞特異的p62遺伝子レスキューマウスで得られた検体について,肝癌の特性や発癌シグナルの解析を継続する.また,Nrf2遺伝子のレスキューマウス作製を引き続き行う. 【ヒト臨床標本を用いた解析】既に免疫染色が終了した,Keap1,LC3A,multi-ubiquitinについて,非肝癌部(肝硬変部)と肝癌部双方におけるそれらの染色強度および局在と,臨床情報との関係について統計学的解析を継続する.Nrf2についても,抗体を変えて条件検討を継続しており,免疫染色による解析を目指す.
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