研究課題/領域番号 |
19K08462
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
横山 純二 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70422615)
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研究分担者 |
寺井 崇二 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00332809)
牛木 辰男 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40184999) [辞退]
高村 昌昭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20422602)
八木 一芳 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (20220121)
冨永 顕太郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60812154) [辞退]
佐藤 裕樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50644556)
早津 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40468898)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小腸絨毛基底膜 / 小腸内細菌増殖症 / 脂肪吸収 |
研究実績の概要 |
電子顕微鏡を用いた小腸絨毛基底膜の観察を行ってきた。走査型電子顕微鏡(SEM)による観察で、ラットの小腸絨毛基底膜にはカイロミクロンや自由細胞が通過する窓(孔)が存在すること、食事負荷によりこの窓に量的変化がみられることを報告してきた。また、高脂肪食の摂取により、この変化がより活発になることから、窓がカイロミクロンの吸収、通過を調節していると考えられた。さらにヒト組織における窓の観察にも成功し、今回の研究では、ヒトの脂肪吸収おけるその役割や制御機構、腸内細菌による影響についての検討を行っている。 小腸内視鏡下にヒト十二指腸、空腸、回腸各部位から生検材料を採取し、SEMによる基底膜の窓の観察を行った。ヒト小腸においてもラット同様に、小腸絨毛基底膜に窓が存在し、窓を通過する自由細胞の存在も明らかになった。しかし、絨毛の形態は、ラットとは異なり、同じ部位でもバリエーションがあることが分かり、その意義と、機能の違いの有無についての検討が必要であると思われた。そこで、今回、同検体を用いて、小腸上皮の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行い、空腸と回腸の絨毛上皮についての検討を行った。細胞の高さ、微絨毛の長さは、いずれも空腸が回腸に比べ有意に高かった。ゴルジ等の細胞内器官には、空腸、回腸で明らかな違いはみられなかったが、lysosomeについては、空腸より回腸で有意に多く認められた。いずれも空腹時の検体であるため、肥満者と非肥満者との違い等についての検討が必要と考えている。 また、呼気水素・メタン分析装置(呼気試験)を用いての小腸内細菌増殖症(SIBO)の検討を行っている。偽性腸閉塞症や過敏性腸症候群のほか、肝硬変患者での陽性例が多く認められた。SIBOの有無とその意義について現在解析をすすめており、今後は、腸内細菌と脂肪吸収の効率、窓との相関を含め、総合的に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小腸内視鏡によるヒト小腸粘膜の生検と、生検材料からのSEM観察、TEM観察は予定通りすすんでいる。また、呼気水素・メタン分析装置を用いてのSIBOの測定も軌道に乗り、データを着実に集積している状況である。また、カプセル内視鏡を使用しての空腸絨毛の白色変化についての検討は、小腸白色絨毛と脂質異常症・BMIとの相関について、レトロスペクティブに検討をすすめている。健常者と肥満者における高脂肪食摂取下の白色絨毛の変化について今後検討を行いたいと考えており、現在プロトコール作成中であるが、倫理委員会での承認を得られしだい、開始の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトでの小腸絨毛基底膜の窓の意義と、機能について解明するために、これまで集積した検体を使用し、SEM観察、TEM観察をさらにすすめていく予定である。肥満者と非肥満者との違い、炎症性腸疾患における特徴などについて解析をすすめていく必要がある。 小腸カプセル内視鏡による小腸絨毛観察と食事摂取に伴う変化についての検討は、R2年度に行うことができなかった。しかし、これまで600件を超える患者データ、画像はすでに、そろっており、このカプセル内視鏡画像をレトロスペクティブに検討し、空腸における絨毛の白色変化の有無と、BMIとの相関について現在検討をすすめている。今後は、空腹時と高脂肪食を摂取した後の、空腸における絨毛白色化の変化の違いを、健常者と肥満者のボランティアを募り、比較検討したいと考えている。 呼気水素・メタン分析装置を用いてのSIBOの検討も症例を積み重ね、小腸疾患、代謝性疾患との関連、窓との相関を含め検討していく予定である。また、BMIや内臓脂肪量とSIBOとの相関についても検討を行っていく。これらの結果をもとに、最終的には、腸内細菌と脂肪吸収の効率、窓との相関を含め、総合的に検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた学会、研究会への参加がすべてWebとなったため、旅費の発生がなくなった。また、打ち合わせの中止やWeb上での打ち合わせへの変更により、講師招聘にかかる謝金の発生がなくなった。 2021年度は、学会、研究会等への参加により、情報収集、意見交換を行う予定。
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