研究実績の概要 |
癌の微小環境における複雑な免疫反応を詳細に解析することによって、新規治療につながる重要な病態が解明される可能性がある。我々は肝癌の微小環境におけるHLA(Human Leukocyte Antigen)遺伝子の発現解析を行った。 肝癌合併C型肝硬変患者(13症例)の手術標本(ホルマリン固定, パラフィン包埋標本)よりスライド標本を作成し, 癌部と非癌部よりRNAを抽出した。さらに次世代シークエンサー(NGS, MiSeqTM:Illumina社)にてHLA関連遺伝子を含む182遺伝子のtargeted RNA expression解析を行った。 182遺伝子のRNA発現プロファイルをクラスター解析したところHLA関連遺伝子の発現が有意に亢進している症例群(HLA発現亢進群)が同定された。これらの症例群の癌部では、CD8, CD68, FoxP3,STAT1, PD-L1なども同様に亢進していた。このHLA発現亢進群と非亢進群の臨床背景を比較検討したところ、HLA発現亢進群では血小板数が有意に高く(14.2 vs 9.1, 104/μL, P<0.05), 背景肝の線維化スコア(F score)が有意に低く(2.3 vs 3.6, P<0.05)、腫瘍サイズが大きい傾向がみられた(45.8 vs 27.7, mm, P=0.052)。 HLA遺伝子の発現が亢進している肝癌は、非硬変肝に発生する比較的大きな腫瘍という特徴をもち、これら免疫病態のさらなる解明が新規治療の開発につながる可能性が示唆される。
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