研究課題
難治性潰瘍性大腸炎患者の腸管サイトメガロウイルス(CMV: cytomegalovirus)の再活性化は重症化のリスクであり、抗ウイルス療法選択が必要となるが本邦における薬剤耐性CMV感染率は未だ不明である。本研究ではゲノム解析を行い潰瘍性大腸炎患者の薬剤耐性CMV感染率の実態を明らかにすることを目的とした。さらに簡便なPCR法による迅速SNP解析検査で腸管の薬剤耐性CMV感染を診断できる新たな検査法を開発し、抗ウイルス薬選択のオーダーメイド化を最終目標とした。CMV感染におけるガンシクロビル(ganciclovir (GCV))耐性の90%以上に関与することが知られているUL97遺伝子の変異頻度について、GCV投与歴のない22症例(潰瘍性大腸炎15例、非潰瘍性大腸炎7例)を対象とし、サンガー法によるDNAシークエンスで検討した。UL97遺伝子変異はwild-typeのAD169株を比較対象とした場合、N68D (100%), I244V(100%), and D605E (86.4%)が高頻度の多型として確認された。さらに7つの多型が10%未満の低頻度で確認されたが、いずれもkinase domainには該当しないものであった。検討症例からは過去に報告されている薬剤耐性に関与する遺伝子変異は同定されず、潰瘍性大腸炎とそれ以外の患者との差異も認められなかった。GCV-naive症例でのUL97遺伝子変異は潰瘍性大腸炎の有無に関係なく、極めて少なく、GCV投与により誘導されるものと推測された。一方でD605E (86.4%)は過去の報告から、東アジア人に多くみられるpolymorphysmと考えられた。GCV-naive症例からは薬剤耐性株が同定されなかったことから、抗ウイルス薬選択のオーダーメイド化についての研究は、今後のさらなる検討課題となった。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 13676
10.1038/s41598-021-93168-x