研究課題/領域番号 |
19K08467
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 敦 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20569610)
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研究分担者 |
井上 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (10342990)
鎌田 真由美 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70749077)
近藤 純平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80624593)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸管状腺腫 |
研究実績の概要 |
当院で治療を行った大腸腫瘍の切除組織のFFPE(Formalin fixed paraffin embedded)検体からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて大腸発がんに寄与することが知られている既知の遺伝子をターゲットとした遺伝子パネル検査を行った。この結果、MLH1メチル化陽性大腸がんやリンチ症候群(疑い例を含む)に発生した大腸がんでは体細胞でのAPC遺伝子変異が少ないという特徴を示し、家族性大腸腺腫症における腺腫や散発性大腸腺腫の多くがAPC遺伝子変異が端緒となって発生するのに対して異なる遺伝子変異パターンを示していた。このように病理組織学的に大腸管状腺腫と分類される病変は、多様な分子変化を示すサブグループに分かれる可能性が示唆された。 さらに大腸管状腺腫に対する内視鏡的切除術を行った患者を前向きに集積し、これらの対象症例から切除した管状腺腫組織を使用してCancer Tissue-Originated Spheroid(CTOS)法によるオルガノイド培養を行っている。現在までに家族性大腸腺腫症9例(うち(1)生殖細胞系列でのAPC遺伝子変異陽性3例、(2)APCやMUTYHなど既知の原因遺伝子変異を認めなかった症例4例、(3)遺伝学的検査未実施の症例2例)、リンチ症候群1例、Attenuated polyposis(累計20病変以上の大腸腺腫を認めた症例)5例の合計15例を登録し、これらのうち14症例からのオルガノイド培養に成功していることからヒト患者由来管状腺腫からのオルガノイド培養法を確立したと考えている。これらのオルガノイドを用いて、大腸管状腺腫の多様性を明らかにするために遺伝子変異解析やin vitroでの実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象として、大腸多発管状腺腫(>20個)を有する患者を含めて大腸管状腺腫に対して内視鏡的切除を行う患者を前向きに集積している。2019年度には症例集積が予定通りに進まなかったため研究の進捗はやや遅れているが、2020年度には新規症例の登録が順調に進んでいる。対象患者の大腸管状腺腫組織を用いてCTOS法によるオルガノイド培養を行っており、ヒト大腸腺腫由来のオルガノイド培養技術が確立できたと考えられる。また樹立した管状腺腫由来のオルガノイドおよび元の管状腺腫組織を用いて遺伝子パネル検査による遺伝子変異プロファイルの解析や病理学的評価を行っており、作成したオルガノイドが元の腺腫の性質を反映していることを確認している。さらには大腸管状腺腫の生物学的多様性を明らかにする目的で、オルガノイドの増殖に対するWNTシグナル系やTGF-βシグナル系などのシグナル依存性や、アスピリン処理に対する感受性についての検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も引き続き対象となる大腸腺腫症例の登録を継続し、解析のために必要な数の大腸管状腺腫由来オルガノイドを作成する。樹立したオルガノイドについては、次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析や病理学的評価、生物学的特性を明らかにするためのin vitro実験を順次進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗がやや遅れていることもあり当初の見込み額と執行額が異なったが、2021年度には前年度の研究費も含めて、研究計画に従って研究を進めていく。
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