研究課題/領域番号 |
19K08468
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井上 潤 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50631561)
|
研究分担者 |
酒井 新 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (50792636)
児玉 裕三 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80378687)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 自己免疫性膵炎 |
研究実績の概要 |
自己免疫性膵炎(AIP)は血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする機序不明の膵炎で、わが国で報告され現在IgG4関連疾患の一つとして難病指定されている。ステロイドの反応性から自己免疫的機序によるものと推察されているが、特異的治療がなく再燃率も高く問題となっている。申請者のグループはAIPの一部の患者で自己抗体としてラミニン511に対する抗体を同定し、現在病態の解明に取り組んでいる。腸内細菌に対する抗体が膵臓を交差抗原として疾患発症に関与しているのではないかという仮説を立案し研究を行っている。
今年度はAIP患者の血清中免疫グロブりンと反応する腸内細菌のタンパクを同定する目的で、採取した糞便中の腸内細菌を精製しタンパクを抽出したのち、western blotting法によってAIP患者の血清中免疫グロブリンと反応するバンドを確認した。さらに、質量分析装置を用いて、AIP患者の血清中免疫グロブリンと反応するバンド中のタンパクの同定を行い、ヒト由来タンパクXの同定に至った。今後、このタンパクXに対する抗体が自己抗体としてAIP病態にどのように関わっているかの解析を進める。 また、昨年度よりサンプル数を増やし、AIP患者の免疫グロブリンと結合する腸内細菌を分離し、DNA抽出を行った後に次世代シーケンサーによる16Sメタゲノムによる菌叢解析を行った。その結果、AIP患者のIgG4と結合する特異的な細菌をさらに絞ることができた。今後、腸内細菌がどのようにAIPの病態に関わっているか、また腸内細菌が疾患マーカーになりうるかの解析を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AIP患者の血清中免疫グロブりンと反応する腸内細菌のタンパクを同定する目的で、採取した糞便中の腸内細菌を精製しタンパクを抽出しwestern blot法によってAIP患者の血清中免疫グロブリンと反応するバンドが再現性をもって確認できた。現時点では、質量分析装置でヒト由来タンパクXの同定に至り、特異的なタンパクバンドが再現性をもって確認された。 さらに、昨年度からサンプル数を増やしAIP患者の免疫グロブリンと結合する腸内細菌をMACS法およびFACS法で分離し、次世代シーケンサーによる菌叢解析まで施行することができた。 以上のことから研究の進展としては、臨床サンプルの解析は計画以上おおむね順調であるが、コロナ感染による研究制限などで、病態の機序解明部分の研究はやや遅れているため。総合的にそのような判断とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、タンパクXに対する抗体が自己抗体としてAIP病態にどのように関わっているかの解析を進める。 また、昨年度よりサンプル数を増やし、AIP患者の免疫グロブリンと結合する腸内細菌を分離し、DNA抽出を行った後に次世代シーケンサーによる16Sメタゲノムによる菌叢解析を行った。その結果、AIP患者のIgG4と結合する特異的な細菌をさらなる絞りこみを行った。今後、腸内細菌がどのようにAIPの病態に関わっているか、また腸内細菌が疾患マーカーになりうるかの解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床サンプルを使用したin vitroの解析はおおむね順調であったが、主にコロナ感染による研究制限などで、解析が遅れた部分があるため次年度使用額が発生した。次年度以降で持ち越された研究費を予定通り解析に使用する。
|