令和3年度は、NEAT1による放射線抵抗性誘導メカニズムにおけるマイトファジーの関与について検討を行った。放射線を照射した肝細胞がん細胞株では、細胞内の酸化ストレスが有意に亢進していた。さらにこの酸化ストレスがミトコンドリアに由来するものかどうか、ミトコンドリア由来スーパオキシドアニオンに特異的に反応する蛍光試薬を使って検討を行った。その結果、放射線照射されたがん細胞内でミトコンドリア由来の酸化ストレスが亢進していることが明らかになり、ミトコンドリア障害が生じていることが示唆された。またこのとき細胞内のミトコンドリアDNA量も有意に増加していた。このことから放射線照射は、ミトコンドリア特異的なマイトファジーが低下し、その結果障害を受けたミトコンドリアが上昇している可能性が示唆された。一方、NEAT1を過剰発現させたがん細胞では、放射線照射による酸化ストレスの上昇が軽減し、ミトコンドリアDNA量の上昇も認められなかった。このことからNEAT1は、マイトファジーを誘導し、がん細胞内のミトコンドリア機能を維持していることが示唆された。これに対し、shRNAを発現するアデノウイルスベクターによってGABARAPあるいはSOD2をノックダウンしたところ、NEAT1によるミトコンドリア機能維持作用が有意に抑制された。このことからNEAT1は、放射線を照射した肝細胞がんにおいて、GABARAPおよび SOD2を介してマイトファジーを誘導していることが示唆された。
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