我々はこれまでに、マウスに高リン・高カルシウム・高脂肪食(高リンカルシウム脂肪食)を与えたところ、テネイシンX(TNX)欠損マウスに比べ野生型マウスにおいて、肝臓における線維化や炎症が亢進していることを生化学的手法により明らかにした。また、線維化に関与するTNXのフィブリノーゲン様(TNX-FBG)配列内の同定と、TNX-FBGを介する細胞内シグナル伝達系を、不死化ヒト肝星細胞株LX-2細胞を用いて、I型コラーゲンalpha1 (COL1A1)遺伝子の発現亢進を、in vitro線維化の指標として解析を行った。線維化を引き起こすTNX-FBG領域の関与配列の同定のために、TNX-FBG領域内の各欠失変異体とインテグリンalpha11をLX-2細胞に強制発現させ、COL1A1遺伝子の発現を定量PCR法により検討した。その結果、肝線維化を引き起こすTNX-FBG領域由来の最小アミノ酸領域として15アミノ酸配列を同定した。 また、肝線維化に関与する細胞内シグナル伝達系として知られている、TGF-beta/Smad経路の阻害剤(SB525334)やHippo/YAP経路の阻害剤(verteporfin)をLX-2細胞に添加しCOL1A1 mRNAの発現を検討した。また、YAP siRNAのトランスフェクションによるYAP遺伝子発現抑制時のCOL1A1遺伝子の発現も検討した。その結果、TNX-FBG領域由来15アミノ酸配列とインテグリンalpha11によるCOL1A1遺伝子の発現亢進には、Hippo/YAP経路が強く関与していることが明らかとなった。尚、TNX-FBG領域由来15アミノ酸配列がインテグリンalpha11と結合するか否かを明らかにするために細胞接着アッセイを行ったが、コントロールペプチドにおいてもインテグリンalpha11と結合が見られたため、明瞭な結果を得ることはできなかった。
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