研究課題/領域番号 |
19K08471
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡本 耕一 徳島大学, 病院, 講師 (60531374)
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研究分担者 |
高山 哲治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10284994)
中村 文香 徳島大学, 病院, 特任助教 (70793743)
六車 直樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (90325283)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | SPS / serrated pathway / BRAF |
研究実績の概要 |
SPSに合併した大腸癌症例14例のうち、12症例16病変に対し、遺伝学的検査として、PCR-rSSO法によるRAS変異解析、2step PCR-RFLP法もしくはdirect sequence法によるBRAF変異解析、direct sequence法によるAPC、β-cateninおよびTP53変異解析、マルチプレックスPCRフラグメント解析法によるMSI解析を行った。また、免疫組織化学検査(p53、MLH1)を行った。結果:SPSにおける大腸癌合併は42%(14/33)に認めた。他臓器悪性腫瘍の合併は21%(7/33)に認め、胃癌1例、肺癌1例、前立腺癌2例、膀胱癌1例、腎盂癌1例、喉頭癌・歯肉癌1例であった。さらに、SPSのうち18%(6/33)に大腸癌の家族歴、39%(13/33)に他臓器悪性腫瘍の家族歴を認めた。ポリープの平均個数は15.9個(5-51個)、serrated polypの平均個数は13.9個(5-50個)であった。Serrated polypの最大径の平均は19.4mm(5-40mm)であった。Adenomaの合併は64%(21/33)に認めた。大腸癌症例の男女比は9:5、大腸癌発症時の平均年齢は58.4歳(36-74歳)であった。遺伝学的検討では、RAS変異を31%(5/16)、BRAF変異を31%(5/16)、APC変異を50%(8/16)、β-catenin変異を6%(1/16)、MSI-H/MLH1低下を19%(3/16)、TP53変異/p53蓄積を81%(13/16)に認めた。症例ごとの検討により、3病変がserrated-carcinoma pathwayのMSS癌、1病変がserrated-carcinoma pathwayのMSI癌、8病変がadenoma-carcinoma sequenceによる発癌であることが示唆された。4病変は発癌経路を特定できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度(令和元年度)は当初の計画において下記2項目を中心に解析を進める予定であったため、上記に記載した研究成果が得られており、概ね計画通りに解析が進行していると判断する。 SPS30症例以上のポリープにおける各種遺伝子異常の解析 ①病理組織学的検討 (HE染色)、②遺伝学的検査 (RAS、BRAF、APC、p53などのdeep sequence)、③免疫組織化学検査 (βカテニン、MLH1、p53) を行う。 SPSに合併した大腸癌、他臓器癌の遺伝子異常の解析 1.と同様の方法により、SPSに合併した大腸癌、他臓器癌がどのような遺伝子変異の蓄積、パスウェイにより発癌するのかを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究目的であった、SPS症例、SPSに合併した大腸癌患者の症例の蓄積と遺伝子解析、パスウェイ解析を、今後も引き続き行う。また、当初の計画通り、明らかに遺伝性を有するSPS症例及び家族の末梢血からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いた全エクソームシークエンスを行い、遺伝子異常を同定する。得られたシークエンス結果について、既報の日本人のエクソームの配列 (1,000人ゲノムプロジェクト等) と比較検討を行う。遺伝子に欠失やフレームシフト変異・ナンセンス変異、蛋白質の機能に影響を与えるようなミスセンス変異等の遺伝子の異常について、LOVDやClin Varなどのデータベースを用いて病的意義があるかどうかを検討する。また、得られた遺伝子異常とポリープや癌の体細胞変異を比較することにより、どのような機序 (パスウェイ) で発癌したかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入および委託検査依頼の時期がずれ込み、3月中に納品が完了したが支払いが4月になったため、次年度使用額が生じた。研究計画に変更等は生じないので、次年度も計画に従い研究を遂行する。
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