研究課題/領域番号 |
19K08472
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 創始 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30433220)
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研究分担者 |
津田 洋幸 名古屋市立大学, その他部局等, 教授 (30094387)
赤津 裕康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00399734)
大原 弘隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80285212)
兼松 孝好 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (20381824)
正木 克由規 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00365652)
荒川 和幸 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40790720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / ラクトフェリン / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 大腸がん |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患 (IBD) は難治性疾患であり、抗TNF-α製剤などの生物学的製剤により治療は大きく前進したが、治療抵抗性の患者の増加や医療費の増大、寛解状態における良好なQOLの維持が新たな問題となってきた。ウシラクトフェリン(bLF) には強い抗菌作用や、免疫系への直接作用および抗炎症作用による発がん予防が報告されており、本研究では、IBDモデルマウスへのbLFの経口投与による発症予防・寛解維持・大腸発がん予防効果とメカニズムの解明を試みる。IBDの寛解維持と治療後の発がん予防効果が明らかになれば、bLF は食品添加物であるので直ちに臨床応用が可能となる。マウスモデルで効果を認めれば、bLFは食品添加物・サプリメントとして日本, US, EUで安全性が認められて、大腸ポリープ介入試験でも1年間摂取で何ら有害事象が認めなかったことからも、施設倫理審査委員会の承認を経てヒトへの臨床応用に進める。まず5-ASA製剤のみで寛解維持されている患者へのLF投与で治療増強および寛解維持を評価する。さらに、寛解維持困難例への免疫調節薬や生物学的製剤とのbLF併用で上乗せ効果をみる。(1) NOD2-KOマウス(DSS (dextran sulfate sodium)と発癌物質azoxymethane (AOM)投与により腸炎と大腸発がんを誘導)と(2) dnTGF-βRIIマウス(腸炎と大腸がん自然発生モデル)を用いて、bLFによるIBDにおける抗炎症機序、IBDの発症予防・治果・寛解維持、大腸発がん予防効果と機序について明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回、まずC57BL/6 マウスへのDSS (dextran sulfate sodium) の経口投与とDSS投与開始時の発癌物質azoxymethane (AOM)の腹腔内投与により、IBDと大腸発がんを確認できた。それとともに、bLFの経口投与による腸炎と大腸発がんの抑制効果をみたが、disease activity index (DAI) scoreで腸炎評価し、今のところ、腸炎は抑えられたが、DSS+AOMによる強力な大腸発がんは抑えるまでには至らなかった(報告済;Hajime Tanaka, et al, Biochem Cell Biol. 2021, 99(1)159-165)。そのため、大腸がんの前がん病変であるAbberant crypt (AC), Abberant crypt foci(ACF)で評価をすべく、DSSの投与量とAOMの投与量や投与期間、投与方法を調整してプレリミナリー実験を繰り返している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、IBDモデルマウスのNOD2-KOマウスは、RIKENから購入した胚種から起こして、今後、必要匹数まで繁殖しており、 (1)NOD2-KOマウス(DSS+AOMにより腸炎と大腸発がんを誘導)と(2) dnTGF-βRIIマウス(腸炎と大腸がん自然発生モデル)を用いて、bLFによるIBDの発症予防・治療効果・寛解維持、大腸発がん予防効果と機序の解明を目的に、① 病理検索、② FACSによる炎症関連細胞の解析、③ 便・血液の腸内細菌叢代謝物(短鎖脂肪酸など)の網羅的メタボローム解析、④ マウス便中の腸内細菌叢解析などを行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
IBDモデルマウスにおける① 病理検索、② FACSによる炎症関連細胞の解析、③ 便・血液の腸内細菌叢代謝物(短鎖脂肪酸など)の網羅的メタボローム解析、④ マウス便中の腸内細菌叢解析ができていないため。
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