研究課題/領域番号 |
19K08473
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山口 寛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50381950)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Apg-2 / 熱ショック蛋白 / 脂肪肝炎 / 肝がん |
研究実績の概要 |
熱ショック蛋白(Heat shock protein: HSP)110ファミリーに属するApg-2が、食餌性の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)発症に必須の因子であることを、マウス生体を用いた実験系で同定した。また、ジエチルニトロサミンによる肝がんがApg-2ノックアウトマウスで抑制されることを見出した。HSP70と構造的に相同性が高いApg-2は、HSP70と同様にヒト肝癌で高発現しているが、mTORシグナルを活性化し細胞増殖を正に制御することが分かってきた。その中で我々は、蛋白の恒常性維持、過剰蛋白の分解においてシャペロンシステムとユビキチン・プロテアソームシステムが共役することに注目し、Liver Kinase B1(LKB1)の分解がApg-2の存在下に促進されることを確認した。LKB1の分解は AMP-activated protein kinase(AMPK)シグナルを抑制し、脂肪肝、肝がんを促進する。肝臓における、Apg-2によるリポファジー抑制を介した肝脂肪化、発がん機序の病態を解明するために、Apg-2ノックアウトマウスを用いた肝発がんモデルとして、高脂肪食+コリン欠乏食モデル、ジメチルニトロサミン誘導、高脂肪高コレステロール食モデルを作成し、解析中である。また、Huh7、Huh6、Hep3B、HepG2の肝がん細胞株において、crispr cas9システムでApg-2をゲノム編集し、ノックアウト細胞株を樹立し、オートファジー、リポファジーに与える影響を確認したところ、ノックアウトマウスではchloroquine投与により亢進している結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の1年目の目標である、マウス発がんモデル、肝がん細胞株での検討は順調に進行している。しかし、マウス脂肪肝炎モデルからの、肝細胞初代培養の実験はまだ手つかずであり、2020年度に開始する予定である。また、ヒト検体に関しては、脂肪肝炎サンプルは十分数の確保ができているが、肝がんに関してはまだ少ないため、肝臓外科と共同研究しながら収集している段階である。以上からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①マウス肝がんモデルは作成済みであるので、肝がん、非がん部のオートファジー、リポファジーの系を解析する。②マウス脂肪化モデルとして、Apg-2ノックアウトマウスにTip47, ADRPを投与するモデルで、普通食あるいは高脂肪食下に脂肪肝がどの程度誘導できるかどうかの検討に着手する。③ヒト肝がんサンプルを40検体を目標に収集し、免疫染色でApg-2の発現とオートファジー、リポファジー関連マーカーの発現を比較検討する。④肝がん細胞株でApg-2をゲノム編集でノックアウトしたクローンは作成済みであるので、それらでのオートファジー、リポファジーの亢進だけでなく、細胞内のアミノ酸代謝に注目し、アポトーシスや細胞増殖能に与える影響を検討する。⑤初代培養肝細胞においても、Apg-2ノックアウトマウスから単離した肝細胞を用いて④と同様の検討をおこなう。
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