研究実績の概要 |
熱ショック蛋白Apg-2は、HSP70と同様にヒト肝癌で高発現し、mTORシグナルを活性化させる。近年、シャペロンシステムがユビキチン・プロテアソームやオートファジーシステムと共役し過剰な異常蛋白を分解することが報告された。我々は、LKB1のユビキチン化による分解がApg-2の存在下に促進され、AMPKシグナルの抑制、脂肪肝、肝がんを促進させることを見出した。そこで、オートファジーに注目し、Apg-2によるリポファジー制御を介した肝脂肪化、発がん制御について解析した。 1.Apg-2ノックアウトマウスにジエチルニトロサミンで肝発がんモデルを作成し、40週間、高脂肪食、高脂肪高コレステロール食で脂肪肝、脂肪肝炎を誘導したところノックアウトマウスでの肝発がんは頻度、サイズともに抑制された。また、肝細胞特異的にApg-2を発現するプラスミドをハイドロダイナミックス法で導入したところ、肝発がんが増加傾向を示した。また、Apg-2ノックアウトマウスに高脂肪食かつ肝細胞特異的に脂肪滴構成たんぱく質であるTail‐interacting protein 47 (Tip47), adipose differentiation-related protein (ADRP)を強制発現するプラスミドを導入したところ、肝脂肪化は増加したがWildタイプマウスよりは抑制されていた。 2.ヒト、マウス肝がん細胞株においてApg-2 mRNAをSiRNAを用いてsilencingしApg-2のリポファジーに及ぼす影響を検討したところ、肝脂肪化の改善とともにリポファジーの亢進が確認された。 3.ヒト脂肪肝炎の肝生検組織を用いて、Apg-2の発現パターンと脂肪化、炎症、線維化を見たところ脂肪化肝細胞での発現が免疫組織学的にも、mRNAレベルでも確認されたが、線維化との関連は傾向に留まった。
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