研究課題/領域番号 |
19K08475
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
滝川 康裕 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50254751)
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研究分担者 |
鈴木 悠地 岩手医科大学, 医学部, 助教 (00779332)
柿坂 啓介 岩手医科大学, 医学部, 講師 (40583563)
王 挺 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 特任講師 (70416171)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 急性肝不全 / 肝再生 / 細胆管反応 / 類洞内皮 / 血管内皮細胞増殖因子 |
研究実績の概要 |
急性肝不全に陥ったマウス個体の肝再生時に、肝細胞の分化転換が起こり、CK19などの胆管上皮に特徴的な蛋白が発現することを確認した。さらに肝細胞障害部位に胆管様構造の増生、いわゆる細胆管反応が起こることを確認した。さらに、ヒト肝不全病理組織では、増生した胆管周囲にCD31陽性の脈管構造が確認された。細胆管には肝細胞への分化能を持つ肝前駆細胞が存在し、肝再生に寄与すると考えられている。また、正常胆管は胆管周囲毛細血管叢から栄養を受ける。急性肝不全の肝再生過程における肝細胞から細胆管反応への形質転換が、肝再生にとって必須の過程と想定し、この構造変化とその増殖環境、ことに血管増生との関わりを肝障害モデルマウスを用いて形態的に観察している。 現在までの所、肝細胞障害部に増生した細胆管に沿って、CD31陽性の血管内皮の増生が見られることを確認した。さらに、血管内皮増殖シグナルの主要な経路であるVEGFの受容体を阻害すると、細胆管増生が抑制されることを見出している。 以上の結果は、肝障害モデルマウスの肝細胞障害部位に細胆管と栄養血管が協調して増生していることを支持する所見と考えられる。今後、最終年度は、細胆管と増生血管との関わりに関する構造解析を進めると共に、細胆管細胞増殖に関わる液性因子の検索と血管内皮のVEGFシグナルとのクロストークの探索を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性肝不全では、肝再生不全に見られる細胆管反応から、肝細胞への再分化により臓器再生に至る経過を想定し、その増殖環境を解析している。現時点で、細胆管の増生環境として血管内皮の増殖が必要であり、それにVEGFが関与している可能性まで捉えられている。
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今後の研究の推進方策 |
細胆管と増生血管との関わりに関する構造解析を進めると共に、細胆管細胞増殖に関わる液性因子の検索と血管内皮のVEGFシグナルとのクロストークの探索を予定している。 具体的には、in vivoで、肝障害モデルマウスの細胆管反応に関して、組織透明化の技術を用いて3次元構造解析を進める。これにより、細胆管と血管内皮との関連を形態的に明らかにしていく。また、in vitroの実験で、類洞内皮と肝細胞あるいはoval cellとの共培養を行い、胆管構造の形成を形態的に観察すると共に、VEGF受容体の阻害実験により内皮細胞の関与を明らかにしていく。可能であれば内皮細胞由来の細胆管細胞増殖促進因子の同定を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した試薬の一部の納入価格が見積もりより安かったため
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