研究課題
本研究はオリンパス社と共同開発した細胞レベルまで拡大可能な超拡大内視鏡であるEndocytoscopy system (ECS)を用いた研究である。1)ECSで得られた画像をdeep learning AIで解析し、内視鏡医のECS診断のサポート可能か検討する。現在AIメディカルサービス社へ撮影した動画を送付し、そこより画像を抽出しこれまでのストック画像と合わせ新規のDeep learning AIがすでに作成された。以前に論文報告したAIでは食道ECS画像の診断精度はROC曲線で高倍率画像ではAUC=0.90, 低倍率画像ではAUC=0.72だったものが、新規AIで同じ画像を解析させると高倍率画像ではAUC=0.94, 低倍率画像ではAUC=0.93と驚くほどに改善し内視鏡医の診断精度と変わりがなくなってきている。この他十二指腸癌のECS画像を検討し Endocytoscopic Observation of Non-Ampullary Mucosal Duodenal Cancer. Case Rep Gastroenterol. 2020;14:156-164.として報告、さらに家族性大腸腺腫症のECSも論文作成中である。2)食道癌を弱拡大で病変表層の微細血管形態が観察できる。食道では組織の種類や癌の壁進達度によって特徴的な血管形態を示すことが知られているがこの血管形態と血管新生因子との関連を明らかにし、食道癌発癌初期の多段階血管新生の概念を証明するという課題に関しては新たに埼玉県立がんセンター立川哲彦医師を研究分担者として迎えることとし、研究を進めている。血管新生抑制因子であるChondromodulin-1とVEGF-Aを免疫染色にて解析し Esophagus. 2020;17(2):159-167.に報告。さらにHIF-1α、TGF-βも免疫染色を開始する。
2: おおむね順調に進展している
新規の食道エンドサイト解析AIはすでに開発され、その性能は以前のAIを上回るものであり、内視鏡医のエンドサイト診断を十分にサポートできるものと期待している。また十二指腸にもエンドサイト診断の知見を広げ新しい診断を提案できると考えている。血管新生の研究も新たな研究分担者を加えさらに発展してゆくことが期待できる。
AIメディカルサービス社はほかにも胃癌、大腸癌、食道癌でも拾い上げから質的診断までをサポートするAIを作成中ですでに大きな研究成果をあげている。大腸癌の拾い上げ、質的診断AIは2019年のDDW-USAの最優秀演題となった。これらとともに食道エンドサイトAIも市販可能なものとして仕上げることが最終目標である。血管新生の研究も免疫染色はほぼ網羅的に行うことができてきており拡大内視鏡で見る発癌早期の血管形態変化の理由がおぼろげながら見えてきた状況である。これらをまとめ上げ一つの仮説として提案することが次の課題である。
新規免疫染色のスタートが遅れたことが主な要因として挙げられる。また、UEGW(スペイン)参加渡航費を科研費でまかなえなかったことも理由の一つである(ポルトガルを経由したため)。現在免疫染色を開始し軌道に乗っているため概ね順調であるが、DDW-USAも新型コロナウィルスの影響で中止となるなど学会延期、中止が相次いでいるため適宜調整が必要である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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