研究課題/領域番号 |
19K08478
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90407114)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | C型肝炎 / 血小板減少 / 自己抗体 / BAFF |
研究実績の概要 |
C型肝炎における血小板減少の病態形成には、自己免疫の関与が考えられているが、自己抗体の動態やその他の自己免疫機序の詳細は十分に解明されていない。そこで本研究では、C型肝炎患者に直接作用型抗ウイルス薬 (DAA) の治療を行い、その前後の検体を用いて、血小板減少に関わる自己抗体 (抗GPIIb/IIIa抗体) を産生する細胞数、B細胞活性化因子のB-cell activating factor (BAFF) の濃度の変化を測定した。 DAAで8から12週間治療を行い、治療後にC型肝炎ウイルスRNAが陰性となったC型肝炎患者検体を用いた。DAA治療前の抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞数は6.4±1.2個、治療後は4.1±0.7個であり、治療後に抗体産生B細胞数が減少した検体が多くみられた (P=0.023)。DAA治療前の血小板数は15.4±7.3万/μl、DAA治療後は15.9±7.0万/μlであり、抗体産生B細胞数の変化と血小板数の変化については相関が認められなかった。DAA治療前後で血小板数の変動が見られなかったため、DAA治療前のC型肝炎患者を血小板減少 (13万/μl未満) の有無で分けて、抗体産生B細胞数を比較した。その結果、抗体産生細胞数は血小板数正常群で3.7±5.4個、血小板数減少群で10.6±12.5個であり、血小板数減少群は正常群に比べて有意に高値を示した (P=0.014)。また、DAA治療前の血漿BAFF濃度は1258±120pg/ml、治療後は1011±97pg/mlであり、治療後に血漿BAFF濃度が減少した検体が有意に多くみられた (p<0.001)。 現時点の結果から、C型肝炎ウイルスの排除により、BAFFの産生が正常化し自己反応性B細胞が減少した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで肝硬変で血小板減少に関わる自己抗体である抗GPIIb/IIIa抗体を産生する細胞が検出されていた。本研究において、C型肝炎でも抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞が検出され、その抗体産生細胞数はDAA治療後で減少した。また、B細胞の生存や分化に関与するサイトカインであるBAFFの濃度もDAA治療後で減少がみられた。これらのことから、血小板減少を伴うC型肝炎における自己免疫機序を解明するための基礎データが得られた。そのため、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
血小板減少に関わる自己抗体として、巨核球系の造血因子であるトロンボポエチン(TPO)に対する自己抗体やTPO受容体に対する自己抗体が知られている。令和2年度は抗GPIIb/IIIa抗体以外の自己抗体(抗TPO抗体、抗TPO受容体抗体)についても検出を試みる。また、B細胞の増殖や分化に関するサイトカインとしてBAFF以外にAPRILやIL-6などがある。それらの濃度について、ELISAキットで測定する。また、フローサイトメトリーを用いて、B細胞のサブクラス解析も行う予定である。総合的に判断して、血小板減少を伴うC型肝炎における自己免疫機序の解明を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度に本研究内容と同じ競争的研究費を獲得した。その競争的研究費の研究期間が1年のみであり、その研究費で消耗品などの購入を行ったため、次年度使用額が発生した。 今後の使用計画としては、自己免疫関連のサイトカインの測定をELISAで測定するため、ELISAキットを購入する予定である。また、フローサイトメトリーを用いてB細胞のサブクラス解析を行うため、標識抗体を購入する予定である。さらに、現在、研究成果が出ており、学会発表や論文作成を検討している。そのため、学会参加費や英文校正に助成金を使用することを予定している。
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