研究課題/領域番号 |
19K08478
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90407114)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | C型肝炎 / 血小板減少 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
C型肝炎における血小板減少の病態形成には、自己免疫の関与が考えられている。本研究では、C型肝炎患者に直接作用型抗ウイルス薬 (DAA) の治療を行い、その前後での抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞数、血漿BAFF/APRIL濃度の変化を検討した。 DAA治療を行なったC型肝炎患者27例を検討した結果、抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞数はDAA治療により有意に減少した (P=0.008)。また、血小板減少を有するC型肝炎群、血小板正常のC型肝炎群に分け、DAA治療による抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞数の変化を検討した結果、血小板減少群でのみ、DAA治療により抗体産生細胞数が有意に減少した (P=0.013)。さらに、DAA治療による血小板数改善群、非改善群に分け、DAA治療による抗体産生細胞数の変化を検討した。その結果、血小板数改善群でのみ、DAA治療により抗体産生細胞数が有意に減少した (P=0.045)。 DAA治療により抗体産生B細胞数が減少したため、B細胞の生存、分化、抗体産生に関与するBAFFとAPRILの血漿濃度を測定した。血漿BAFF値はDAA治療前から治療後に有意に減少した(P<0.001)。一方、血漿APRIL値はDAA治療による影響を受けなかった。 次に、血小板減少を有するC型肝炎群、血小板正常のC型肝炎群に分け、DAA治療による血漿BAFF値の変化を検討した。血漿BAFF値はいずれも治療前から治療後までに有意な減少を示した (血小板減少群; P<0.001、血小板正常群; P=0.042)。さらに、DAA治療による血小板数改善群と血小板数非改善群に分け、血漿BAFF値の変化を検討した。その結果、血漿BAFF値はいずれも治療前から治療後まで有意な減少を示した (血小板数改善群;P=0.002、血小板数非改善群; P=0.02)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C型肝炎患者のDAA治療前後での抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞数、血漿BAFF濃度及び血漿APRIL濃度の変動を検討した。抗GPIIb/IIIa抗体産生細胞数及び血漿BAFF濃度は、DAA治療により変動が見られ、本研究の仮説を証明できた。しかし、昨年度に引き続き、コロナ禍により患者が予定通り来院できないこともあり、治療後の検体採取が困難となった患者が認められた。現在は得られた検体で、本研究結果をまとめるように進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究でB細胞の生存や抗体産生に関与するBAFFがDAA治療により変動することが明らかになった。そのため、B細胞の増殖や分化、抗体産生に関与する他のサイトカインであるIL-6、IL-21などの血漿中濃度をELISAキットで測定する予定である。また、血小板減少と関連のある抗TPO受容体抗体を測定し、DAA治療との関連性を検討する予定である。 総合的に検討し、血小板減少を伴うC型肝炎における自己免疫機序の解明を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度はコロナ禍により、患者検体の採取等に問題が生じ、当初の研究活動予定が計画通り進まないことがあった。そのため、消耗品購入が先送りになり、次年度使用額が生じた。そして、科学研究費助成事業の補助事業期間の延長を行なった。 今後の使用計画は、B細胞と関連性が高いサイトカインを測定するため、ELISAキットを購入する予定である。また、研究成果が出ており、現在、論文作成を実施している。その際の英文校正、論文投稿費に助成金を使用する予定である。
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