研究課題
免疫抑制や化学療法により発症するB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は、HBVキャリアや日本人の2,500~3,000万人にものぼる既往感染者に発生し得る。HBV再活性化は重症化することが多く、その対策は極めて重要である。また、B型肝炎による肝臓癌はC型肝炎と比較してその発生数が低下しておらず、B型肝炎による肝発癌への対策は十分とは言い難い。最近、海外からHBVエンベロープ蛋白質上の”additional glycosylation”(ここでは追加糖鎖修飾とする)がHBV再活性化や肝発癌症例で高頻度に認められるという報告が相次いでいる。我々はこれまでの本研究事業において、国内のHBV再活性化症例におけるエンベロープ蛋白質の追加糖鎖修飾変異の発現頻度を明らかにした。これまでにHBVの追加糖鎖修飾の原因となる遺伝子変異をin vitro感染モデルに導入し、遺伝子変異がHBVの増殖やウイルス蛋白質発現および免疫原性に与える影響を解析した。その結果、HBs抗原の免疫原性の低下およびHBV DNAの分泌増加を誘導し、HBVの潜伏感染の状態を再現することによりHBV再活性化発生のハイリスクとなるウイルス側要因を明らかにした。また、肝細胞内のウイルス蛋白質の蓄積や小胞体ストレス等肝癌発生に影響を与える因子を解析し、HBVのエンベロープ蛋白質追加糖鎖修飾による肝発癌発生機序を解析した。In vitro感染モデルにおける肝発癌機序の解析において、genotype Aのクローンに免疫エスケープ変異および追加糖鎖修飾を挿入したHBVをtransfectionしたが、小胞体ストレスの上昇は認められなかった。このため、現在発癌症例の多いgenotype Cのクローンに変異を挿入し、感染肝細胞および非感染肝細胞においてRNAシーケンスを行い肝発癌に影響する変化の網羅的解析を施行している。
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Hepatology
巻: 74(1) ページ: 83-98
10.1002/hep.31712.