研究実績の概要 |
粘膜バリア機能制御による好酸球性消化管疾患に対する新たな診断法および治療法を開発すべく研究を進めた. <ビオチンを用いた食道粘膜透過性の検討> 好酸球性食道炎患者と健常者の食道粘膜生検組織を用いて粘膜上皮のバリア機能をビオチンの透過性の違いを検討し,好酸球性食道炎の食道粘膜で有意にビオチンの透過性が亢進し,治療後において好酸球浸潤が改善後に透過性の亢進が残存する群と透過性が改善する群があることが明らかとなった.また,透過性亢進が残存する群では肥満細胞の浸潤がみられ,粘膜内にIgG4がみられることが明らかとなった.一方,CAPN14, filaggrin, eotaxin-3などの発現は,好酸球浸潤が改善すると共に改善する故知が明らかとなった.好酸球浸潤が改善後も粘膜透過性の亢進が残存する群で肥満細胞浸潤とIgG4がみられ,完全に粘膜治癒が得られていない状況を反映しており,今後これら分子を大規模な前向き研究で評価し,不完全治癒および再発予測のマーカとなる可能性を評価する必要がある. <レーザーマイクロダイセクションによるタイト結合関連因子の局在解析> 食道扁平上皮粘膜層でのタイト結合関連因子(クローディン1, クローディン4, 送るーディン)のmRNA発現の局在が異なることが明らかとなった.タイト結合関連因子によって顆粒層と有棘層・基底層で発現局在が大きく異なり,食道粘膜のバリア機能および好酸球性食道炎などの病態における変化を考える上で大変興味深い知見を得ている.好酸球性食道炎の食道粘膜では,顆粒層への分化が抑制され,食道上皮においてバリア機能を担う顆粒層が菲薄化あるいは消失していると考えられる.
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