研究課題
現在までに集積された心房頻拍の超高密度マッピングデータから2つのテーマについて論文化した。1)僧帽弁周囲を旋回する心房頻拍(以下PMATと略す)について。32のPMATを解析し、これらを過去にカテーテルアブレーション既往のないA群6例、アブレーションで線状焼灼の既往のあるB群10例、アブレーション歴があるが線状焼灼既往のないC群11例、外科術後のD群5例に分類した。A・C群は遅延伝導部位を左房前壁中隔に認め、B群は過去の線状焼灼部位の伝導再開が遅延伝導の原因であった。A群は高齢であり伝導障害の原因は加齢に伴うものと考えられ前壁中隔への線状焼灼で治療に成功、B群は医原性であり遅延伝導部位への通電で治療に成功した。20ヶ月のフォローアップ期間で90.3%の患者は再発を認めなかった。本研究は高密度マッピングによりPMATの機序・適切な治療方法を明らかにした(Heart Rhythm 2021;18:189-198)。2)左房前壁に回路が限局する心房頻拍(LAAWAT)について。7のLAAWATを詳細に解析し、全例において前壁中隔に低電位領域を認めた。遅延伝導は低電位部位内部のみでなく、正常・低電位部位の境界にも認め、頻拍周期は266ms、回路長は8.7±2.1cm、伝導速度は30.4±3.7cm/sであった。また2つの頻拍は機能的伝導障害が回路の成立に関わっていた。頻拍回路の遮断で全ての頻拍の治療に成功した。14ヶ月のフォローアップ期間で全例再発を認めなかった。本研究はLAAWATの回路の詳細・機序を超高密度マッピングで明らかにした (J Cardiovasc Electrophysiol. 2021 in press)。
2: おおむね順調に進展している
心房細動アブレーション治療後の心房頻拍症例はほぼ予定通りの症例数が集まり解析できている。心臓外科術後心房頻拍の症例数は少なく今後も蓄積が必要である。心外膜側を回路に含む心房頻拍も症例は少ないことから、引き続き症例の蓄積が必要である。
引き続き心房細動アブレーション後、心臓外科手術後の心房頻拍症例に対して超高密度マッピングを続け症例数を蓄積する。また心房細動アブレーション後の心房頻拍に関しては詳細な回路をオフラインで解析を行い、論文発表をする予定である。
コロナウイルス蔓延の影響により海外・国内学会参加が困難となり、交通費および学会参加費が大幅に減少したこと、イベントレコーダーの購入台数が予定より少なかったため、残額を次年度に繰り越しとした。次年度は、論文校正費用、掲載費用、学会参加費に加え、イベントレコーダー購入費用として使用する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Heart Rhythm .
巻: 18 ページ: 189-198
10.1016/j.hrthm.2020.09.016.
J Cardiovasc Electrophysiol.
巻: - ページ: -
10.1111/jce.14983.