研究課題
肥大型心筋症は、心筋の肥大及び拡張能の低下を来す疾患であり、多くの症例において遺伝子変異を認める。原因の多くはサルコメア構成遺伝子であり、変異により収縮・拡張機能が障害され、長期的な心筋障害に至る。本研究では、重症心不全例を対象に遺伝子解析を行い、サルコメア構成遺伝子において高病原性変異を同定し、これら症例から疾患iPS細胞を樹立した。疾患iPS細胞を心筋に分化させた後にRNA抽出を行い、正常アレル及び変異アレル由来の転写産物を特異的に認識するプローブを設計し、ドロップレットデジタルPCR解析を用いた転写産物の定量解析を行った。樹立した疾患iPS細胞に対して、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いた遺伝子変異の修復及び導入を試みた。ターゲット領域を特異的に切断するガイドRNAを複数設計し、SSAアッセイや培養細胞を用いたCel-Iアッセイにてその活性を評価するとともに、相同組み換え修復を目的としたテンプレートDNA設計した。これらを用いて、iPS細胞に対してエレクトロポレーションを行い、同一の遺伝子バックグラウンドをもつアイソジェニックiPS細胞株樹立を継続した。また、疾患iPS分化心筋に対して、ゲノム編集を用いたサルコメアライブイメージングを行うためのガイドRNAを設計し、 SSAアッセイや培養細胞を用いたCel-Iアッセイにてその活性を評価するとともに、修復テンプレートDNAを設計した。これらの遺伝子を導入するためのアデノ随伴ウイルスを精製した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、1: 高病原性変異をもつ拡張相肥大型心筋症症例からの疾患iPS細胞樹立、2: ゲノム編集を用いたアレル改変によるアイソジェニックiPS細胞の樹立、3: ゲノム編集を用いたサルコメアイメージング、4: iPS分化心筋を用いた詳細な機能解析を目的として設定し、2019年度は1~3について研究の進捗が得られた。
2019年度研究において樹立、作成したアイソジェニック疾患iPS細胞を心筋に分化させ、モーションベクトル解析やカルシウムイメージングを用いた機能解析を行う。
物品費について、主にiPS細胞培養、分化心筋解析、ゲノム編集に用いる消耗品として使用した結果、78577円の残額が生じた。2020年度において、主に消耗品費用として使用予定である。
すべて 2020 2019
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International Heart Journal
巻: 60 ページ: 944~957
https://doi.org/10.1536/ihj.18-701