研究課題/領域番号 |
19K08491
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 秀和 神戸大学, 医学研究科, 講師 (20590342)
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研究分担者 |
杜 隆嗣 神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (50379418)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん治療関連心機能障害 / 悪性リンパ腫 / 高比重リポ蛋白 / フィブロネクチン |
研究実績の概要 |
がん治療関連心機能障害(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)の発症における前向き観察研究として、神戸大学医学部附属病院ならびに兵庫県立がんセンターにて悪性リンパ腫に対して抗がん剤治療を施行予定の患者を対象とし、心機能の推移を追跡中である。 一方、CTRCDの予防における新たな標的として高比重リポ蛋白(HDL)の“質”に着眼した基礎研究を行っている。癌領域ではリポ蛋白質の代謝障害と種々の臓器の発癌との関連が示唆されている。HDLに関しては、HDL-Cの低下により発癌リスクが上昇するとの報告がある一方、含有する分子によってHDLは癌の発生・進展に対しむしろ負の方向に働く可能性が示唆されている。 安定狭心症患者27名から抽出したHDLについて解析したところ、2名(7.4%)において細胞接着性糖タンパク質であるフィブロネクチンを含有していた。フィブロネクチンは癌の増殖、浸潤、転移に関わることが知られているが、担癌状態におけるHDLの病態生理学的役割にどのような影響を及ぼすのかについては不明であった。ヒト子宮頸癌由来の細胞株であるHeLa細胞にフィブロネクチン含有HDLまたは非含有HDLを添加したところ、前者においてFAKのリン酸化が亢進した。FAKは非レセプター型チロシンキナーゼの一種であり、成長因子や細胞接着分子であるインテグリンを介したシグナルを調整し、細胞の増殖・分化などに関わっている。フィブロネクチン含有HDLを添加したHeLa細胞では非含有HDL群に比べて、細胞増殖を活性化し、同時に接着能も亢進させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん治療関連心機能障害(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)の発症における前向き観察研究が順調である。 また、CTRCDの予防における新たな標的として高比重リポ蛋白(HDL)について基礎研究を行っているが、HDLに含有される分子によっては癌の発生・進展に対しむしろ負の方向に働く可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
がん治療関連心機能障害(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)の発症における前向き観察研究を完遂させる予定である。 抗がん剤による心毒性に対するHDLによる保護効果について、HDLが含有するたんぱく質・リン脂質の組成がどのような影響を与えるのか、引き続き検討予定である。
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