トランスサイレチン型アミロイドーシス患者において心臓病変の発症機序はいまだ不明である。これまでトランスサイレチン型アミロイドーシス患者の心臓における遺伝子発現を網羅的に解析した報告はほとんどない。本研究では心臓自体にトランスサイレチンの沈着を促進する変化があるのではないかと仮説を立て、心筋生検サンプルを網羅的に解析することでアミロイド沈着促進因子の同定を試みた。 令和3年度は、トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者と年齢・性別を合わせたコントロール群として肥大型心筋症患者の心筋生検サンプルからmRNAを抽出した。抽出したmRNA検体は、濃度、量、質に問題が無いことを確認し、Library調製のステップに進んだ。グループ間で発現レベルに差のある遺伝子を次世代シークエンサーで検出を行った。発現量が解析可能レベル以上に保持された遺伝子のうち、smoothelinやcadherinを含む392個の遺伝子がトランスサイレチン型心アミロイドーシスで2倍以上に増加していた。一方、炎症性サイトカイン受容体やヒートショックプロテインなどを含む309個の遺伝子が2倍以上に低下していた。これらの遺伝子発現データをもとに、クラスタリング解析とGO解析を行った。 トランスサイレチン型心アミロイドーシスで2倍以上に発現が増加した遺伝子の発現を、培養心筋細胞で確認を行う方針である。また、これらの症例は経時的に経胸壁心エコーによる心機能の評価、高感度トロポニンTの測定、心臓MRI 検査を施行しており、これら臨床データとの相関を検討する。
|