全患者数は、2030年には我が国において現在の約130万人に達することが推測され、高齢化社会を迎えていく上で、今後心不全患者の増加が見込まれている。本研究は、2群PH患者の予後を如何に良くできるかの問いを立案した。近年、心不全診療で左室駆出率が保たれた心不全;Heart failure preserved ejectionfraction (HFpEF)と駆出率が低下した心不全;HF reduced EF(HFrEF)に分類されているが、HFpEF患者においても推定肺動脈収縮期圧が48mmHg以上で48mmHg未満群と比較し予後が悪いことが報告され、2群PHの肺血管病変について注目されて来ている。2群PHの肺血管病変は、isolated post capillary PH(Ipc-PH)とDPG>7mmHgのCombined pre and postcapillary PH(Cpc-PH)に分類される。Cpc-PHでは、PAH患者同様に、微小肺動脈の中膜が肥厚し肺血管抵抗が上昇しており、10年生存率は未治療PAH患者と同様に予後不良であることが報告されているが有効な治療法が確立されていないのが現状である。2群PHでは、肥満・メタボリックシンドロームの関係が言われている。近年、糖尿病治療薬SGLT2阻害剤が、心不全の予後を改善させることが証明されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究で、SGLT2阻害剤が、TACモデル及び高脂肪食負荷2群PHマウスモデルで、抗炎症作用により肺血管リモデリングを抑制し、肺高血圧の進展を抑制することを見出した。またin vitroで肺動脈平滑筋細胞遊走をSGLT2阻害剤が抑制することも示し、Journal of cardiologyに報告した。
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