肥満患者は高血圧罹患率および心血管合併症の発症リスクが高いが、その機序として交感神経活動(SNA)の亢進やアルドステロン(Ald)の分泌亢進が関与していると考えられている。研究代表者は、「肥満では、過剰に産生されたAldが、脳内レニン-アンジオテンシン(Ang)- Ald系(RAAS)に直接的かつ/あるいは間接的に作用し、食塩嗜好やSNAの亢進をもたらす」、という仮説をたて、本仮設の妥当性を検証している。まず、正常血圧ラットに対して、Aldを皮下投与すると血圧が上昇し、食塩嗜好、SNAおよび脳内におけるRAASコンポーネントの発現が亢進することを見出した。これら血圧、食塩嗜好、SNAの上昇は、脳内への上皮型Naチャネル拮抗薬、(プロ)レニン受容体[(P)RR]阻害薬、Ang 1型受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の注入によって抑制された。次に、高脂肪食負荷により作成した肥満ラットにおいて、血圧が上昇し、食塩嗜好とSNA、脳内におけるRAASコンポーネントの発現亢進が見られることを確認した。現在、同肥満ラットの脳内に上皮型Naチャネル拮抗薬、(P)RR阻害薬、ARB、MR拮抗薬を注入した時の血圧、食塩嗜好、SNAに及ぼす影響を検討しているところである。これらの脳内注入実験により、血圧、食塩嗜好、SNAの上昇が抑制されれば、上記仮説の妥当性が強く支持されるものと考えられ、肥満における高血圧発症の脳内機序、心血管合併症発症機序に関する新しい知見が得られるものと期待される。
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