研究課題
昨年度までの研究で私達は血管内皮細胞老化がSASPを介して脂肪細胞の早期老化を誘導し、その結果、脂肪機能異常から全身の代謝異常を引き起こすことを明らかとした。一方、高齢者では心血管疾患が生命予後のみならず健康寿命にも大きな影響を与えることが知られている。心血管疾患の原因は血管の動脈硬化であり、血管内皮細胞は動脈硬化の進展においても重要な役割を果たしている。そこで今年度は血管内皮細胞老化が動脈硬化の発症・進展に及ぼす影響について解析を行なった。ApoE-KOマウスと私達が作出した血管内皮特異的老化マウスを交配し、血管内皮細胞だけが老化した動脈硬化モデルマウスを作成した。これらマウスに高コレステロール食を与えて動脈硬化の進展を評価した。その結果、血管内皮が老化したマウスでは早期(高コレステロール食負荷2週間)から動脈硬化巣の形成が促進されており、後期(高コレステロール食負荷8週間)になると粥腫の不安定化を増悪させることがわかった。血管内皮細胞老化が動脈硬化を増悪させるメカニズムの解析を進めた結果、老化血管内皮細胞ではえ炎症刺激時のNF-kBシグナルが著明に亢進しており、その結果、VCAM-1などの接着因子の発現が強く誘導され、単球の接着が促進されることが明らかとなった。更にNF-kBシグナル亢進には老化に伴うepigeneticな変化が関わっていることを見出した。血管内皮細胞の老化は老化関連疾患の発症に非常に強く関わっており、血管内皮細胞老化の予防は健康長寿に繋がる治療戦略として有望である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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