研究課題/領域番号 |
19K08503
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
甲斐 久史 久留米大学, その他部局等, 教授 (60281531)
|
研究分担者 |
翁 徳仁 久留米大学, 医学部, 助教 (10412503)
新山 寛 久留米大学, 医学部, 助教 (30309778)
加藤 宏司 久留米大学, 医学部, 准教授 (70279165)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | サルコペニア / バイオマーカー / 予後予測 |
研究実績の概要 |
申請者らは近年、特殊なスキルや高額機器を用いず実地医家や一般循環器科医が外来でも簡便に施行できる血中バイオマーカーを用いたサルコペニア指標Biomarker-based sarcopenia index (BSI)が、心疾患におけるサルコペニア診断に有効であることを報告した。 本研究の具体的な目的は、①登録時BSIが、サルコペニアおよびサルコペニア肥満の悪化リスクの層別化に有用か、②登録時BSIが、心血管事故発症や生命予後の予測に有用であるか、を検討し、③サルコペニア悪化・新規発症、サルコペニア肥満悪化・新規発症、心血管事故発症を予測する登録時BSIの診断cut-off値を明らかにすることである。 新規の心疾患入院患者を前向きに登録し12ヶ月間追跡する本研究においては、初年度は患者登録と入院時データ収集を行った。観察および検査項目は以下の通りである。a. 年齢、性、身長、体重、BMI、腹囲、合併症・既往症、喫煙、飲酒、服薬内容。b. 理学的所見:随時血圧・心拍数、家庭血圧・心拍数。c. 血液検体検査:脂質・空腹時血糖・HbA1c・HOMA指数・腎機能・尿酸値・肝機能など。一般生化学、CK、NT-proBNP、高感度TnT、尿中アルブミン。d. 心機能:心エコー。e. 血管機能:血管内皮機能(FMD)、動脈硬化検査(CAVI、脈波伝搬速度)。f. 筋・炎症関連血中バイオマーカー。 g.栄養マーカー:血清アルブミン、総コレステロール、総リンパ球数、CONUTスコア。h. 筋力:握力。i.歩行速度:10m歩行時間より算出。j. 骨格筋量・脂肪量:①生体電気インピーダンス法による四肢骨格筋量および総脂肪量、②CTによる大腿四頭筋断面積および腹部脂肪面積。 また、現システムデータの一部を用いて、心血管患者の服用薬剤と筋肉量に関する横断的観察研究などを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
患者登録については、令和元年7月から登録システムの本研究に向けたアップデートが終了し登録を開始した。しかしながら、令和2年2月中旬以降、新型コロナウイルス感染症対策のため、申請者の施設における診療体制・検査体制が通常から大きく変わり、当初予定していた入院検査・データ収集が不可能となった。さらに同年3月中旬から9月上旬、施設全体の外来診療および入院診療の抑制および緊急事態宣言発令(4月7日-5月14日)のため、新規患者登録がストップした。さらに、同年9月末に電子カルテシステム変更のため患者登録システムに新たなデータ移行システムを組み込むことが必要となり、新規患者登録の再開が同年11月となった。その後、徐々に新規患者登録を進めることが出来たが、令和2年・3年には再三の緊急事態宣言発令のため新規登録が鈍化した。また、この間、登録患者の脱落、12か月後の観察終了時に予定していた検査を行うことが出来ない症例が多数であった。そのため、登録予定患者数達成のために登録期間を延長して試験を継続している。 一方、従来の登録システムに加えて現システムの新規データの一部を用いて、心血管患者の服用薬剤と筋肉量に関する横断的観察研究を行い、サルコペニア予防・治療に繋がる薬剤スクリーニングなどを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
十分な新型コロナウイルス感染症対策のもと、回復基調にある新規患者登録を当初目標数までさらに増やす。また、登録中断以前の症例について、12ヶ月後のフォローアップが遅れたものについても追加フォローを試行する。 内皮機能評価については、当初、エンドパッドによる評価を予定していたが機器不具合のためが使用不可能となった。登録時にエンドパッドを施行したため12ヶ月後に評価できない症例、登録時にエンドパッドが使用不可能で内皮機能評価が出来なかった症例については、本研究には組み込まず、新たにFMDによる評価を行った症例のみを検討に加えることとなった。 血中バイオマーカーについては、検査効率と経費削減のため、一定数のサンプルが蓄積した都度、計測する予定であった。しかしコロナ禍による患者登録の遅れにともないサンプル蓄積も遅れため測定スケジュールも遅れている。今後もサンプル蓄積状況をみながら、効率的に測定を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初請求していたもののうち、新規患者登録の遅れのため、登録時および12か月観察期間終了時の血中バイオマーカー測定数が予定を下回った。その結果、検査費用も予算を下回った。新型コロナウイルス感染症拡大のため出席予定の国内・国外学会がオンライン開催となったため、旅費が不要となった。 現在、血液サンプルが蓄積されてきたため、まとまったサンプル数に達した時点で、各種バイオマーカー測定を進め、次年度に検査費用として使用する予定である。
|