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2019 年度 実施状況報告書

急性心筋梗塞に対する再潅流後迷走神経刺激による梗塞巣縮小効果の機序解明と最適化

研究課題

研究課題/領域番号 19K08504
研究機関国立研究開発法人国立循環器病研究センター

研究代表者

稲垣 正司  国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (80359273)

研究分担者 杉町 勝  国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40250261)
李 梅花  国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (60443496)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード臨床心臓病学 / 心筋梗塞 / 迷走神経 / 心不全
研究実績の概要

本研究では、「急性心筋梗塞に対する再灌流後の短期的迷走神経刺激治療法」を確立して臨床応用に結び付けるために、①迷走神経刺激による心筋再生効果に着目した治療効果の機序解明、②有効性・安全性の両視点から最適な刺激条件の検討、を行うことを予定している。本年度は、課題②を実施した。
ウサギの頸部右迷走神経に神経刺激用電極を植込み、冠動脈左室枝・回旋枝を閉塞し、30分後に再灌流を行った。迷走神経刺激の刺激条件が有効性に及ぼす影響を検討するため、迷走神経の刺激条件(電流強度:3段階、パルス幅:3段階、周波数:3段階、トレイン持続時間:2段階、再灌流から刺激開始までの間隔:2段階、刺激期間:2段階)を実験計画法(直交表)に基づいて変更する計画で実験を開始した。しかしながら、生体に負荷される刺激強度は電流強度・パルス幅・周波数以外に電極と神経の接触が大きく影響し、電極と神経の接触はコントロールできない因子であるため、電流強度・パルス幅・周波数の変更では実質的刺激強度を段階的に変化させることが困難であることが明らかとなった。このため、神経刺激強度については、刺激電流のみを変化させ、心拍数を10%低下させる強度と5%低下させる強度について検討することとした。また、再灌流から刺激開始までの間隔を30分と60分で検討することを予定していたが、臨床現場では30分以内に刺激を開始することが可能であり、あえて60分後から開始することは実臨床にそぐわないとの判断から、再灌流から刺激開始までの間隔は30分に固定することとした。
本年度は、刺激強度を心拍数10%低下、トレイン持続時間を10秒/60秒に固定して、刺激期間を1日と3日とで比較した。3日間刺激群では、コントロール群(無治療)に比して梗塞巣/リスク領域が有意に減少したが、1日刺激群では有意な減少は認めなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

迷走神経刺激の刺激条件が有効性に及ぼす影響を検討するため、迷走神経の刺激条件のうち神経刺激強度について、電流強度:3段階、パルス幅:3段階、周波数:3段階に変化させて検討することを予定していた。しかしながら、実験を進める中で、神経刺激が生体に及ぼす効果はこれらの因子以上に神経電極と神経の接触が大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。神経電極と神経の接触はコントロールできない因子であるため、神経刺激強度は心拍数低下率などの生体反応を指標としてコントロールすることが適切であると判断した。
実験条件のコントロールが困難であったため、予定通りに研究を実施するに至らず、実験プロトコルの変更が必要となったため、研究の進捗は計画から遅れることとなった。

今後の研究の推進方策

当初、神経刺激条件を、電流強度:3段階、パルス幅:3段階、周波数:3段階、トレイン持続時間:2段階、再灌流から刺激開始までの間隔:2段階、刺激期間:2段階について検討することを予定していたため、直交表L16(2^15)を用いて16通りの組み合わせで実験を進めることを予定していた。しかしながら、本年度の実験から、神経刺激強度は生体の反応を基準に2段階、再灌流から刺激開始までの間隔は1段階で行うことが妥当であることが明らかとなった。R2年度は、神経刺激条件を、神経刺激強度:2段階、トレイン持続時間:2段階、刺激期間:2段階について検討を行うことを予定しており、これは直交表L4(2^3)を用いて4通りの組み合わせで実験を実施することで実現可能である。実験条件の組合わせが1/4に減少したので、R2年度末までに本年度の遅れを取り戻すことが可能と考える。

次年度使用額が生じた理由

参加を予定していた学会がコロナウィルス感染症のため中止となったため、旅費・その他で予定していた約10万円の執行を行わなかった。また、研究施設移転時に動物の飼育を外部に委託したが、予定より少数の委託で済んだため、その他が約15万円の執行減少した。一方、抗体試薬等が予定していた金額よりも高額だったため物品費が約12万円増加した。このため、差し引き約12万円の次年度使用額が生じた。
次年度使用額は全額を試薬の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Intracerebroventricular infusion of donepezil prevents cardiac remodeling and improves the prognosis of chronic heart failure rats.2020

    • 著者名/発表者名
      Li M, Zheng C, Kawada T, Inagaki M, Uemura K, Sugimachi M.
    • 雑誌名

      J Physiol Sci.

      巻: 70 ページ: 11

    • DOI

      10.1186/s12576-020-00739-0.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Donepezil Markedly Attenuates the Progression of Cardiac/Renal Remodeling in Rats with Renal Artery Stenosis-Induced Hypertension.2020

    • 著者名/発表者名
      Li M, Zheng C, Kawada T, Uemura K, Inagaki M, Hayama Y, Nishikawa T, Sugimachi M.
    • 学会等名
      JCS 2020
  • [学会発表] Development of a Chronic Heart Failure Model by Renal Artery Stenosis-Induced Hypertension in Rats.2020

    • 著者名/発表者名
      Li M, Zheng C, Kawada T, Uemura K, Hayama Y, Nishikawa T, Inagaki M, Sugimachi M.
    • 学会等名
      JCS 2020
  • [学会発表] Donepezil Treatment Prevents the Progression of Chronic Heart Failure and Improves the Prognosis in Spontaneously Hypertensive Rats with Myocardial Infarction.2020

    • 著者名/発表者名
      Li M, Zheng C, Kawada T, Uemura K, Inagaki M, Sugimachi M.
    • 学会等名
      第97回日本生理学会
  • [学会発表] 迷走神経刺激は心筋梗塞ラットにおける間葉系幹細胞移植の治療効果を増強する2020

    • 著者名/発表者名
      李 梅花、稲垣 正司、鄭 燦、川田 徹、上村 和紀、杉町 勝
    • 学会等名
      第58回生体医工学会
  • [学会発表] Oral Administration of Donepezil Markedly Prevents the Progression of Chronic Heart Failure in Renal Artery Stenosis-Induced Hypertensive Rats.2019

    • 著者名/発表者名
      Li M, Zheng C, Kawada T, Inagaki M, Uemura K, Sugimachi M.
    • 学会等名
      ESC 2019
  • [学会発表] Chronic vagal nerve stimulation suppress thirst through decreasing vasopressin secretion in the rats with chronic heart failure2019

    • 著者名/発表者名
      C. Zheng, M. Li, K. Uemura, T. Kawada, M. Inagaki, M. Sugimachi
    • 学会等名
      ESC Asia

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公開日: 2023-12-25  

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