ラットにストレプトゾトシン(STZ)液と対照液を皮下注射したところ、STZ投与ラットでは8週後に有意な血糖値の上昇がみられること確認している。 1) 張力と細胞内カルシウムの測定:対照ラットとSTZラットより多細胞心室筋であるトラベクラを摘出し、サルコメア長2.0 μmにおける発生張力、最大収縮速度、最大弛緩速度、細胞内カルシウム濃度、細胞内カルシウム低下速度を記録した。STZラットにおいて発生張力、最大収縮速度、最大弛緩速度、細胞内カルシウム濃度は有意に低下し、細胞内カルシウム低下速度は延長していることを確認した。 2)ミトコンドリア内カルシウム:Rhod-2蛍光を用いてミトコンドリア内カルシウムを記録した。細胞外カルシウム0.7 mmol/Lでは対照ラットとSTZラットの間にミトコンドリア内カルシウムに有意差は認めなかったが、細胞外カルシウム4 mmol/LではSTZラットにおいてミトコンドリア内カルシウムが低下した。Ru360の投与により、ミトコンドリアへのカルシウム流入を抑制したところ、ミトコンドリア内カルシウムが低下し、この低下が心筋の弛緩能と細胞内カルシウム低下速度に関与することが示唆された。 3) タンパク発現の比較:対照ラットとSTZラットにおけるMCU、SERCA、SERCA活性を制御するホスホランバン(PLB)の発現を比較した。STZラットにおいてはMCUの発現が低下しており、この低下がミトコンドリア内カルシウムの低下に関与することが示唆された。また、STZラットにおいてはSERCAの発現も低下しており、心筋の弛緩能の低下と細胞内カルシウム低下速度の低調に関与すると考えられた。
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