βアドレナリン受容体遮断薬 (β遮断薬)などのGタンパク質共役受容体(GPCR)標的薬は心不全治療の第一選択薬である。その効果はGPCRの副経路とも言われるβ-アレスチン経路の活性化が担っていることが報告され、他のGPCRにおいてもβ-アレスチン経路活性化が注目されている。GPCRのひとつであるCXCR7は、β-アレスチンのみを活性化するβ-アレスチン偏向性受容体であり、成体マウス心臓に発現するGPCRのなかで最も発現が高い。しかし、成体マウス心臓におけるCXCR7の役割は不明のままであった。本研究の目的は「心筋梗塞後リモデリングにおけるβ-アレスチン偏向性受容体CXCR7の機能解明」である。①CXCR7機能の主座となる細胞種は心筋細胞である:マウス心臓を用いたin situ hybridizationやsingle cell-RNAseq解析結果から、CXCR7の遺伝子発現は心筋細胞に多く認められ、一方で血管内皮細胞において発現している細胞は非常に少なかった。心筋特異的CXCR7遺伝子欠損(KO)マウスの心筋梗塞モデルを作成したところ、野生型マウスと比較して心収縮能は有意に低下した。一方で血管内皮細胞特異的CXCR7 KOマウスや線維芽細胞特異的CXCR7 KOマウスにおいては、表現系に変化を認めなかった。これらの結果から梗塞後リモデリング過程においてCXCR7機能の首座となる細胞腫は心筋細胞であると考えられた。②CXCR7特異的アゴニストであるTC14012はβ-アレスチンを介してERKを活性化する:心筋細胞のCXCR7による心保護効果がβ-アレスチンシグナルものかを確認するために、CXCR7アゴニスト(TC14012)とアレスチン阻害剤(barbadin)を用いて検討を行った。結果、CXCR7の細胞死抑制効果とβ-アレスチンの介在が確認できた。
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