研究課題
冠動脈灌流によって拍動収縮する食用豚心筋切片モデルを用いて、心筋興奮(局所電位、興奮閾値、興奮伝搬)・工学電気指標(電流・電圧・インピーダンス)・超音波画像情報をモニターしながら高周波通電が施行できる実験系を構築した。この実験系を用いて、難治性不整脈の発症起源となる心筋深部に焼灼治療を行うための通電手法構築のための研究を行った。高周波電磁波は抵抗加熱と伝導加熱によって心筋に凝固壊死を誘導する。表層心筋は抵抗加熱を主体とする短時間通電で適切な焼灼が得らえるが、厚い心筋を焼灼するためには、①心筋内部への負荷電流密度を上昇させる、②伝導加熱を有効活用する工夫が必要であった。深部心筋の焼灼効率を向上させるには以下が有効と考えられた。①Bipolar法を用いて電流密度の高い通電を行う、②一定以上(>40秒)の通電時間を負荷して伝導加熱効果を高める、③カテーテル接触圧を一定以上に保つ(>20g)。一方で治療手技の安全性を担保するために重要な項目は以下であった。①治療標的部位の心筋厚さに応じた出力設定を用いる。スチームポップを避けるために薄い心筋部位(<14㎜)にはBipolar法で高出力負荷を行わない。②経時的なインピーダンスモニタリングを行い、総インピーダンス低下値を20-25ohmまでに留める。なお通電中のインピーダンス変化は、心筋焼灼変化+心筋温度上昇の2要素が関わる事を確認した。③心筋破裂の原因となる大型のスチームポップが発症する前には、マイクロバブルが生じる事が超音波画像で確認できる。マイクロバブルの検出は合併症回避の指標に用いることが出来る可能性がある。以上の研究成果は関連学会(日本循環器学会総会2022年3月、日本不整脈心電学会地方会2022年1月、日本不整脈心電学会総会2021年7月)と専門学術誌(Circulation AE 2022)に報告した。
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Circ Arrhythm Electrophysiol.
巻: Jan;15(1) ページ: e010392
10.1161/CIRCEP.121.010392.