動脈硬化は慢性炎症が基盤となり異常な脂質バランスと免疫反応によって引き起こされ、単球およびマクロファージは動脈硬化病態において重要な役割があることが知られている。ケモカイン受容体はGPCRの一つであり、活性化マクロファージの遊走活性、増殖活性、またアポトーシスなどの機能制御を担っている。ケモカインは一種のリガンドが数種類の受容体に作用することが知られており、シグナル伝達の多様化をもたらしているが、CX3CL1(Fractalkine)が作用する受容体は現在のところCX3CR1受容体の一種類しか知られておらず、そのシグナル伝達調節機構については知られていない。βアレスチンはCX3CR1などGPCRのアダプター分子として知られ、一酸化窒素による翻訳後修飾(S-ニトロシル化)を受けることを見出しており、本検討においてはこのCX3CR1シグナルが調節される可能性があるか、また動脈硬化病態においての役割について検討を行っている。 これまでマクロファージ(RAW264.7)にβアレスチンのS-ニトロシル化が遊走活性に影響するかについてiNOSによってを受けないβアレスチンの変異株を発現させてBoyden chamberを用いて検討すると、βアレスチンのS-ニトロシル化によって遊走活性が増強していた。これにより膜上のCX3CR1受容体の内在化も抑制されることが予測された。GPCRの内在化の検討には細胞質成分の多いHEK293細胞がよく使われているため、これまでに樹立したCX3CR1安定発現株HEK293細胞細胞で内在化が確認できるかどうかを免疫染色で確認した。その結果、Fractalkineで30分刺激したところ受容体が内在化していることを確認できた。
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