研究実績の概要 |
DVTの病態解明は18世紀に提唱されたVirchow3徴から大きく進んでいない。実臨床で経験するDVTはプロテインS欠損などの凝固異常や、腫瘍圧迫などによる血流障害もない、いわゆる原因不明のDVTが圧倒的多数であり、それらに漫然とワーファリンなどの抗凝固療法が行われているのが現状である。 血栓症は「時間」や「分」の単位でおこる急性イベントである。血栓はまさに「秒」の単位で生体内に形成され、その後の血栓が器質化する際も「日」の単位で「どの」炎症細胞が、「どこで」活動するかが刻々と変化していく。このような動的な疾患概念を理解する方法として近年、「二光子顕微鏡」による生体イメージング研究が注目されており、脳神経や皮膚、免疫領域において研究が進んでいる。しかし、体内深部にあり、拍動する臓器を扱う循環器領域では生体下の顕微鏡観察が困難である。 それゆえ、単一細胞の培養系や、位置情報のない生化学的解析、死後の病理サンプルでは疾患理解は困難である。研究代表者はこれまで「生体イメージング」によって血栓の病態の可視化、解明に挑戦してきた(Hara et al. Circulation. 2014, Hara et al, Eur Heart J. 2017)が、最近、ヒトDVTに類似した新規のDVTイメージングモデルの開発に独自に成功した。この新規DVTモデルによって、複数の細胞(血小板や赤血球など)や分子(フィブリン、組織因子など)の動態を時間軸をもって、観察、解析し、DVTの形成から器質化に至るまでの病態を解明した。
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