研究課題/領域番号 |
19K08518
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 純一郎 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (10746142)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 心筋梗塞後リモデリング / マクロファージ / ミトコンドリアダイナミクス / マイトファジー |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは細胞内エネルギー代謝の中心的役割を担う小器官であり、その形態を常に変化させている(ミトコンドリアダイナミクス)。しかし、ミトコンドリアダイナミクスがミトコンドリア機能や各種疾患の病態にどのような影響を与えるか未だ不明である。本研究ではミトコンドリア分裂を促進するDrp1(dynamin-related protein 1)に着目し、マクロファージDrp1の機能欠損が心筋梗塞後の左室リモデリングに及ぼす影響を検討した。 その結果、心筋梗塞後の左室リモデリング(左室径の拡大、左室線維化)がマクロファージ選択的Drp1欠損マウスにおいて対照マウスと比べ増悪することを昨年度、報告した。本年度はその機序について検討を行い、梗塞後心臓におけるマクロファージ浸潤がDrp1欠損により増悪することを病理組織学的解析ならびにフローサイトメトリーを用いた解析により明らかにした。さらにマウスより単離したマクロファージを用い、Drp1機能抑制により傷害されたミトコンドリアの排除機構として知られるマイトファジーが阻害されることを見出した。これらの結果はDrp1機能抑制によりミトコンドリアの質の維持機構が破綻し、炎症、左室リモデリング増悪を来していることを示唆するものと考えられた。 また、Drp1がマクロファージにおいてどのような分子群の機能を制御しているかRNAシーケンシングによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、Drp1は炎症性サイトカインの発現のみならず細胞外マトリックス関連の分子群の発現も制御しており左室線維化の増悪を来す原因である可能性が示唆された。 以上の結果はマクロファージDrp1がマクロファージミトコンドリアの質の維持を通じ心筋梗塞後リモデリングに対し抑制的にはたらくことを示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマクロファージDrp1機能抑制により心筋梗塞後リモデリングの増悪を来す機序に関する検討を行い、マクロファージDrp1がミトコンドリアの質の維持にとって重要な役割を果たすことを明らかにした。本年度予定していたマクロファージのトランスクリプトーム解析も進めておりDrp1により制御される分子群が明らかになりつつあるなど、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度、培養マクロファージを用いた系を中心に検討を行ったがマウス心臓より単離したマクロファージを用いたフローサイトメトリーも行っている。2021年度はマウス心臓より単離したマクロファージの解析をさらに進めDrp1が炎症性マクロファージ、修復性マクロファージの集積に及ぼす影響を明らかにする。以上を通じ、マクロファージDrp1の新規治療標的としての可能性を明らかにする。
|