研究実績の概要 |
Osteoprotegerin (OPG)はreceptor activator of nuclear factor kappaB ligand (RANKL)の“おとり受容体”としてRANKLの真の受容体RANKへの結合を阻害することで骨リモリデリングを制御する。これまでの我々の検討によればRANKL/RANK/OPGが心血管系の構造・機能に関与する可能性が示唆される。OPG-/―マウスにアンジオテンシンII(1000 ng/kg/min)を28日持続皮下投与すると野生型(WT)マウスに比べ大動脈破裂死が多いことを見出した(WT, 0/33 vs. OPG-/―, 10/47, X2 = 8.024, p = 0.005)。また、OPG-/―マウスに大動脈解離例が増加した(WT, 2/33 vs. OPG-/―, 11/47, X2 = 4.285, p = 0.038)。組織学評価ではOPG-/―マウスはWTマウスに比して腎動脈分岐部上部の大動脈壁中膜厚(p = 0.05)、および外膜厚(p <0.001)は薄く、同部位にエラスチン線維の断裂を多く認めた(p < 0.001)。免疫染色ではOPG免疫活性はプロテオグリカンの局在に一致した。PCRアレイ法にてOPG-/―マウスはWTマウスに比してペリオスチン遺伝子発現が亢進した(p = 0.0008)。PEG化したリコンビナントOPG製剤をOPG-/―マウスへ投与すると死亡率(p < 0.001)、大動脈破裂死(p = 0.08)、大動脈解離数(p < 0.001)が減少し、これらはペリオスチン遺伝子発現、エラスチン線維の断裂、RANKL濃度の減少と関連した。これらの知見よりRANKL/RANK/OPGシステムが大動脈の構造維持に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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