研究課題
加齢に伴って造血幹細胞に突然変異が生じると、単一クローンに由来する血液細胞の増殖が末梢血中に観察される。クローン性造血を引き起こすドライバー変異は好中球、単球、リンパ球などの末梢免疫細胞でも検出され、これは分化した末梢循環血液細胞の機能的な変化をもたらし、炎症を中心としたメカニズムを介して病態の悪化に関与することが示唆されている。変異遺伝子としてエピジェネティクス関連遺伝子であるDNMT3A、TET2、ASXLI、JAK2、TP53といった遺伝子が同定されている。JAK2はJAK-STAT経路を介してシグナル伝達を行う非受容体型チロシンキナーゼで、JAK2V617FはJAK2変異の中で大部分を占める変異で、機能獲得型変異として恒常的なJAK2-STAT活性化に関与する。我々はヒト検体を用いて、JAK2V617F変異の頻度を検討した。血液疾患を認めない場合でも、肺高血圧症患者の約7%にJAK2V617Fクローン性造血が認められ、これは健常対照群と比べて有意に頻度が高いことを明らかにした。低酸素暴露による肺高血圧症のマウスモデルでの検討では、JAK2V617Fクローンは肺動脈周囲の好中球数を増加させ、好中球由来のエラスターゼ活性やケモカイン増加を介して、肺動脈リモデリングと肺高血圧症を増悪させた。JAK2V617Fは骨髄造血幹細胞から肺好中球へと末梢レベルに分化するに従って、ACVRL1(ALK1)の発現を増加させた。そしてALK1の阻害は浸潤した肺JAK2V617F好中球数および亢進した好中球機能を抑制し、肺高血圧症の増悪を改善した。以上の結果より、ALK1阻害薬がJAK2変異クローン性造血を有する肺高血圧症に有効な治療戦略となる可能性がある。
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