研究課題
本年度は、糖尿病疾患での炎症・再生関連細胞コミュニティが再生臓器の病態を反映しているのではないかという仮説の元、マウスの心筋梗塞モデルで、心筋梗塞前(正常時)、心筋梗塞後1日、3日、7日それぞれのタイミングで心臓・末梢血液・骨髄・脾臓を取り出して細胞分離を行った。本研究室ではPintoらの原法(CircRes, 2016)を改変し、心筋梗塞の再生微小環境から細胞活性・表現型を失わないように心筋細胞以外の細胞を分離する。モデル実験には糖尿病マウス(ストレプトゾシン投与モデル、摂食誘導肥満マウス)および健常マウスを用いた。心筋梗塞部位から分離できた細胞は心筋梗塞後の経時変化があるが、現時点ではFACSデータによるフェノタイプなどについて解析中である。末梢血液・骨髄・脾臓からも同時に細胞を分離して解析した。それぞれの分離細胞のEPCコロニーアッセイを施行したところ、糖尿病モデルからのどの組織の分離細胞においても、EPCコロニー形成細胞の数が、健常マウスからの細胞に比べ減少していた。ただし、組織によって反応の差異があるが、糖尿病マウスでは未分化型EPCコロニーでの変化は少なく、分化型のEPCコロニー減少が確認された。現在、FACSデータによる再生・炎症関連の細胞フェノタイプを解析中である。in vitro実験では、予備実験として健常マウスの全単核球細胞の再生環境(VEGF/SCF/FltL/TPO/IL6)および炎症環境(+TNFa)培養で比較実験を試みている。EPCコロニーアッセでは、炎症環境培養によって分化型EPCコロニー形成細胞が著明に減少する結果が得られている。FACSによるフェノタイプ解析が進められている。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病・老化および健常マウスの心筋梗塞モデルにおける再生・炎症関連細胞の動態変化を経時的に追う実験を進めるが、糖尿病および健常マウスのin vivo実験は終了している。細胞解析データを現在まとめている段階である。また、in vitro実験は、再生・炎症環境培養の確立のため健常マウス細胞でデータを解析している。よって、in vivoおよびin vitro実験およびその解析進行はおおむね研究計画通りに進んでいる。現時点での技術的問題点はない。解析データによる実験結果の内容は、とくに研究の変更を考慮するような問題点は有していない。
2020年度は、計画通り老化マウスの心筋梗塞モデルの動物実験を開始する予定である。ただし、新型コロナウィルスによる緊急事態によって施設利用の制限、研究スタッフの勤務制限があるため、実験の延期などが始まっているため、研究進行の遅延は心配している。昨年度実験の解析を現在進めている。in vitro実験についても、同様の状況で遅延は予測される。
動物実験等は予定通りの進行で予定通りの研究費執行であったが、学会参加などが計画を変更したため、次年度消耗品での使用を計画する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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