研究課題
ミトコンドリア心筋症は二次性心筋症の一つと考えられているが、鑑別診断のための検査法が確立していない。通常全身性ミトコンドリア病の一表現型として認識されているが、心臓単独での発症の場合は病理検査の診断基準がないため、これまでは確定診断が困難であった。そこで、ミトコンドリア病診断のゴールドスタンダードであるミトコンドリア呼吸鎖障害の診断基準に心筋病理を追加するために、Stereologyを用いて電子顕微鏡検査におけるミトコンドリア体積密度の定量評価を行った。また、呼吸鎖酵素抗体による免疫組織病理学的分析を行い、ミトコンドリア心筋症の病理診断の可能性について検討を進めている。心筋生検で得られた心筋を、電顕用、光顕用、凍結用にそれぞれ固定、保存し、凍結用の心筋は呼吸鎖酵素活性を測定した。電顕用エポンブロックより標本作成後、低倍率での撮影後にRandom Sampling法でGridの撮影を行い各Gridの心筋細胞における筋原線維、核、ミトコンドリアの体積密度をStereologyを用いて測定した。免疫染色は光顕用パラフィンブロックより標本を作成し、Complex I, II, IVに対する抗体を用いて免疫染色を行った。ミトコンドリア心筋症の確定診断は、Bernierの診断基準および心筋の呼吸鎖酵素の活性欠損を有するものとして2群にわけ、電顕像および免疫染色像でミトコンドリア心筋症とそれ以外の心筋症とで比較検討を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
心筋生検を受けた肥大性心筋梗塞または拘束性心筋症で心筋呼吸鎖酵素測定が可能であった11人の患者をエントリーし、呼吸鎖酵素活性と遺伝子学的研究が行われ、4人の患者がミトコンドリア心筋症と診断された。定量分析で電子顕微鏡を使用すると、心筋細胞内のミトコンドリアの体積密度は、非ミトコンドリア心筋症ループと比較してミトコンドリア心筋症グループで大幅に増加していた。また、免疫組織病理学的結果は、呼吸鎖酵素活性の結果と互換性を認めた。これらの病理学的検査は、ミトコンドリア心筋症を他の心筋症と区別することができる可能性がある。現在、結果をまとめ論文化している。さらに今後は多施設共同研究に発展させていく予定である。
電子顕微鏡像および免疫染色法によるミトコンドリア心筋症の診断は精度が高いものと期待できる。現在多施設共同研究により症例数を増やしての解析を進めている他、ミトコンドリア異常モデルマウスを用いた心筋での評価にも応用する予定である。
コロナ感染症拡大によって出席できなかった学会があったため。次年度に旅費として使用予定。
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Int J Cardiol.
巻: 279 ページ: 115-121
10.1016/j.ijcard.2019.01.017