研究課題
細胞外からのカルシウムイオン流入調節に重要な役割を担っているAキナーゼアンカー蛋白(AKAP)79/150のノックアウト(AKAP-KO)マウスを用いて、β遮断薬であるカルベジロールの冠攣縮抑制効果を検討した。AKAP-KOマウスにアゴニスト(エルゴノビン)を投与すると体表面心電図にてST上昇が観察された。カルベジロール投与により、ST上昇は抑制されたが、他のβ遮断薬であるプロプラノロール投与では抑制されなかった。さらにAKAP-KOマウスの大動脈より分離培養した大動脈平滑筋細胞をアセチルコリンで刺激したところ、カルシウムイオンの細胞内への流入はコントロール群とカルベジロール投与群で有意差を認めなかった。すなわちカルベジロールは、細胞内へのカルシウムイオン流入抑制とは別の機序により冠攣縮を抑制することが示唆された(2021年第85回日本循環器学会学術集会発表)。現在そのメカニズムを検討中である。次に、臨床例に即した冠攣縮性狭心症動物モデルとして我々が作成したヒトR257H亜型PLC-delta 1血管平滑筋過剰発現マウス(PLC-TGマウス)を用いて、冠攣縮性狭心症の治療薬として用いられているジルチアゼムの冠攣縮抑制効果のメカニズムについて検討した。ジルチアゼムはL型カルシウムチャネル(Cav1.2)の拮抗作用に加え、Cav1.2のリン酸化ならびにプロテインキナーゼC活性を抑制することにより、冠攣縮を抑制することが明らかとなった(Int Heart J 2021)。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載された研究計画がおおむね実行されている。冠攣縮の新しい機序としてのカルシウム感受性亢進ならびにカルベジロールの冠攣縮抑制効果について、興味深い結果が得られている。上記区分(2)に該当すると思われる。
交付申請書の研究計画に沿った実験をすすめていく。AKAP-KOマウスならびにPLC-TGマウスで見出されたカルシウム感受性亢進を介する新しい冠攣縮のメカニズムならびにカルベジロールの冠攣縮抑制効果について、その機序解明をすすめる。冠攣縮性狭心症患者由来のiPS細胞を用いた解析も進めていく。
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巻: - ページ: -
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