研究課題
我々は以前、平滑筋の収縮に重要なPhospholipase C (PLC)-delta 1の活性亢進が、冠攣縮性狭心症の成因に中心的な役割を果たしていることを明らかにした。p122RhoGAP/DLC-1(p122)蛋白はPLC-delta 1の活性化因子である。p122蛋白を血管平滑筋特異的に過剰発現させたマウス(p122-TGマウス)は冠攣縮を引き起こす。このマウスの大動脈より分離培養した血管平滑筋をアセチルコリンで刺激したところ、カルシウムイオンの細胞内への流入は野生型マウス由来の大動脈平滑筋細胞と比較して有意に亢進していた。この亢進はカルシウム拮抗薬であるジルチアゼムにより抑制された。さらに、カルシウムが含まれていない溶液で同様の実験を行ったところ、細胞内のカルシウムイオン濃度は有意に亢進し、筋小胞体からのカルシウム放出をXestospongin Cにより抑制すると、カルシウムイオン濃度上昇が抑制された。以上から、p122蛋白は筋小胞体からのカルシウムイオン放出亢進に寄与していることが明らかになった。(2022年度第86回日本循環器学会学術集会発表)我々は最近、p122蛋白に結合しPLC活性を増強させる新たな分子であるIQGAP1を同定した。IQGAP1を過剰発現させた培養細胞では、アセチルコリン刺激により細胞内カルシウム濃度が上昇した(FASEB Bioadv. 2019)。冠攣縮の新しい機序解明に向けて、詳細なメカニズムを検討中である。研究期間全体を通じて、細胞内カルシウムイオン濃度上昇を伴う冠攣縮のメカニズムならびに同イオンの濃度上昇を伴わない冠攣縮の新たな機序解明に向けた研究を実施してきた。本研究により冠攣縮性狭心症の新しい機序解明のみならず、カルシウム拮抗薬治療抵抗性の難治性冠攣縮性狭心症の機序解明ならびにその治療法開発への応用が今後期待される。
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PLoS One
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