山形大学医学部遺伝子実験センターにおいてCRISPR-Cas9を用い、Sirt-1欠損マウスを作成した。ホモ接合隊は胎生致死のため、実験にはヘテロ欠損マウスを使用した。まず野生型マウスで大動脈弁におけるSirt-1の発現を調べたところ、大動脈側に比べ、左室側でSirt-1の発現が多い傾向を認めた。8-10週齢のC57/BL6雄の野生型マウスとSirt-1欠損マウスを用いて、ワイヤー傷害大動脈弁狭窄症モデルを作成した。Sirt-1欠損マウスでは、野生型マウスに比べ、大動脈弁通過速度が有意に速く、大動脈弁の傷害が強かった。大動脈弁狭窄症では大動脈弁の左室側に比べ大動脈側に石灰化が強いことが知られている。Sirt-1の発現が大動脈側で低下していることより、加齢や炎症によりSirt-1の低下が大動脈弁狭窄症の進行に関係していると考えられた。 ブタ大動脈弁間質細胞を用いて、Sirt-1が炎症に与える影響を検討した。大動脈弁間質細胞にTNFα刺激を行うとNFκBの活性化を認めた。siRNAを用いて、Sirt-1を抑制すると、TNFαによるNFκBの活性化が増悪する傾向を認めた。逆にSirt-1を大動脈弁間質細胞に過剰発現させたところ、TNFαによるNF-κBの活性化が抑制された。 Sirt-1による大動脈弁内皮細胞における作用についても検討を行っている。今後、フローチェンバーを用い、ずり応力がSirt-1発現に与える影響やSirt-1が炎症、アポトーシスに与える影響を検討し、Sirt-1が大動脈弁狭窄症の病態形成に与える影響をさらに解析する。
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