本研究計画を通して、細胞外核酸・細胞外小胞を介した心筋細胞・脂肪細胞・マクロファージの相互作用の解明に取り組んだ。心房筋細胞に高頻度興奮を与えた際には、細胞外ATP、セルフリーDNA、細胞外小胞がそれぞれ放出され、液性因子として作用することを我々は報告してきたが、in vitroの実験系において、心房筋細胞に高頻度興奮刺激を与え、培地中に放出されたこれらの細胞外核酸・細胞外小胞の作用を、マクロファージ・脂肪細胞それぞれについて評価した。 マクロファージに対して、細胞外ATPは低濃度ではchemoattractant factorとしてマクロファージの遊走を惹起し、高濃度ではマクロファージ内のIL-1βなどの炎症性サイトカイン産生を誘導した。セルフリーDNAは、マクロファージに取り込まれてTLR9によって認識され、IL-6等の炎症性サイトカイン産生を誘導した。細胞外小胞はマクロファージと融合し、内包するRNAが細胞内に移動して、IL-1βの産生を誘導した。以上より、心筋細胞から放出される細胞外核酸・細胞外小胞は、それぞれ異なる機序で炎症を誘導すると考えられた。 また、細胞外小胞を簡便に評価する測定系の開発に取り組み、細胞外小胞の抽出過程を行わずに血漿から直接粒子径と粒子数を定量する手法を開発した。この手法を応用して、心房細動・多発期外収縮などの不整脈疾患において、末梢血中の細胞外小胞が増加することと、それぞれが血管内皮細胞などにあたえる変化が異なっていることを明らかにした。
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