本研究の目的は運動負荷心エコーを用いて運動時右室-肺動脈カップリングと左心房機能との関連を明らかにすることであり,さらに死亡および予定外の心不全入院を複合エンドポイントとした予後との関連を明らかにすることである.2019年度から運動負荷心エコー検査の適応を満たす左心系心疾患患者について外来および入院で組入れを開始した.除外基準は,僧帽弁置換術後,先天性心疾患,活動性の心筋虚血,左室流出路閉塞による有意な圧格差,心疾患以外で予後1年以内と予想された症例,20Wの運動負荷が困難な症例,心エコーの画質が悪く解析が困難な症例とした.運動早期およびピーク時の画像はTOMTEC 社の解析装置を用いてオフライン解析し,左房機能,右室-肺動脈カップリングの評価に加えて左室壁運動異常,心臓弁膜症の定性・定量的評価を行い,検査後の複合エンドポイントを1年後、2年後に追跡した. 2019年度上旬は予定通り患者を組入れることが可能であったが,2019年冬に世界的流行が開始した新型コロナウイルス感染症により研究の中断を余儀なくされた。運動負荷心エコーは患者と検査実施者がエコーの撮像を行う際に身体への接触を伴う検査であり,半径1メートル以内に15分以上同席する必要のある検査である点,患者の運動時に普段よりも激しい換気運動がなされるためウイルスの拡散が懸念された点、院内の感染症対策の方針から運動負荷試験が中止となった点,などにより2020年から2022年の3年間にかけて患者の組み入れをほとんど行うことができなかった.少ない症例数で予備解析を行い,追加画像解析により運動時右室-肺動脈カップリングと左心房機能との関連を解明できないか検討したが,明確な結論を出すには至らなかった. 2023年以降,引き続き本研究は三重大学医学部附属病院で継続して行うため,本研究で使用した費用に関しては十分活用される見込みである.
|