研究課題
当該年度は、遺伝性不整脈疾患の病態解明、治療法開発を目指し、以下の疾患の解析を行った。(遺伝性不整脈疾患(QT延長症候群、QT短縮症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、早期再分極症候群、LMNA関連心筋症、家族性洞不全症候群等)特に、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍症例にて検出されたカルモジュリン遺伝子変異(CALM2-E46K)の解析に関して、患者由来iPS細胞、isogenicコントロールiPS細胞を用いた電析生理学的解析、リコンビナントカルモジュリン、リアノジン受容体を用いた生化学的解析を行った。患者由来iPS細胞由来分化心筋細胞における電気生理学的解析では、高頻度の早期後脱分極、遅延後脱分極、異常なCa波を認め、筋小胞体からのCaリークは増大していた。また、イソプロテレノール負荷で、分化心筋細胞の異常な脱分極、Ca波の頻度は増加し、患者において運動時に致死性不整脈を発症する病態を再現していた。生化学的解析に関しては、変異カルモジュリンのCa親和性は野生型と比べて変化なく、これは他のQT延長症候群を呈するカルモジュリン変異の発症メカニズムとして報告されているCa親和性が低下することによるL型Caチャネル電流のカルシウム依存性不活性化遅延が本iPS細胞モデルではみられない理由であると考えられた。また、カルモジュリン、心臓リアノジン受容体間のリアルタイム分子間相互作用解析、[3H]ryanodine結合実験による心臓リアノジン受容体活性の評価実験では、変異カルモジュリンは、ドミナント機序により心臓リアノジン受容体を活性化していることが示され、本症例の分子学的発症機序が解明できた。また、iPS細胞モデルを用いて抗不整脈薬の薬効を確認し、本PS細胞モデルは、疾患発症機序の解明、薬効評価、治療法の開発に有用なプラットフォームであると考えられた。
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