研究課題/領域番号 |
19K08540
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小田 哲郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40569290)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カルモジュリン / 小胞体ストレス / ダントロレン / 形質転換 |
研究実績の概要 |
カルモジュリン(CaM)はあらゆる細胞に存在するタンパク質である。心筋細胞においては、CaMはカルシウム放出チャンネルであるRyRの機能を制御している。RyRからCaMが解離することは、病的心肥大や致死的不整脈、さらに心不全の発症に関与していることを我々は報告してきた。しかし、動脈硬化進展機序においてCaMの役割は未だ詳細には解明されていない。また、悪性高熱症の治療薬であるダントロレンはCaMのRyRからの解離を抑制し、RyRの機能を安定化させることを報告してきた。 令和2年度は、CaMのRyRへの結合親和性を高めるとされるダントロレンを用いて血管平滑筋細胞の形質転換機序にCaMがどのように関与しているかを、主に細胞免疫染色法を用いて研究をおこなった。平滑筋細胞において小胞体ストレス発生時には、CaMはRyRから解離しており、核内へ移行していること、ダントロレンはこのCaMのRyRからの解離を抑制し核内への移行をも抑制することを確認できた。この核内へ移行したCaMはMEF2を活性化し、さらにKFL5も活性することで、平滑筋細胞の形質転換を促進していることが示唆された。さらにダントロレンはこのCaMの核内移行を防ぐため、MEF2-KLF5のシグナル経路を抑制し、その結果血管平滑筋細胞の形質転換を抑制することで、動脈硬化の進展ならびに、不安定プラークへの進展をも抑制できる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残す実験も残りわずかではあるが、細胞内のカルシウム濃度測定に苦慮している。令和3年度中には論文を提出する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在はin vitroの研究を集中的に行っているが、今後は、この研究成果(RyR2からのCaMの解離を抑制することの重要性)の信憑性をより強固なものにしていくために、CaM高親和性ノックインマウスなどを用いて(作成済み)、in vivoで動脈硬化の進展抑制効果があるかどうかを検証していく。in vitro、in vivoの両方で良好な結果が得られれば、CaMの血管平滑筋細胞内動態に注目した新たな動脈硬化に対する薬や治療法の探査を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の世界情勢で国際学会への参加を取りやめたため。今後もしばらく国内、国外問わず学会参加が難しい状況であるが、さらなる研究のため、各種の一次抗体、二次抗体が必要となるため、その購入資金として使用する予定。
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