研究課題
心不全の病態形成におけるネクロプトーシスの関与を検討するために臨床研究を行った。方法:心筋生検を施行された拡張型心筋症57例(56±15歳,男性 68%)を対象とした.ネクロプトーシス活性化の指標として,生検標本の免疫染色により解析したリン酸化MLKL(p-MLKL)の発現量を用いた. p-MLKL発現量の中央値を用いて,発現量高値群と低値群に分類した.全死亡および心不全・心室性不整脈による再入院をイベントと定義した.結果:p-MLKLは,心筋細胞の細胞質,介在版および核に発現していた.核p-MLKL発現量は三尖弁圧較差(TRPG,r=0.317)と正に,僧帽弁輪部拡張早期波(e’,r=-0.327)と負に,介在板p-MLKL発現量は平均左室壁厚(r=-0.374)と負に相関していた.中央値3.6年の観察期間における無イベント生存率は,核p-MLKL高値群では低値群と比較して有意に低値であり(4% vs. 31%, p=0.021 by the log-rank test),この関係は背景因子(年齢,性別,BNP,e’,TRPG)をpropensity score matchingにより調整後も同様に観察された.一方,介在板p-MLKL高値群と低値群では無イベント生存率に有意差がなかった.結語:以上の結果から,核でのリン酸化MLKL発現増加が,拡張型心筋症症例の不良な予後と関係している可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
臨床研究は概ね順調に進行しており、最近申請者らが報告したオートファジーとの関連を解析する予定としている。基礎研究では、マウスおよびラットのリン酸化MLKLを検出する抗体が見つかったため、今年度解析を予定している。
MLKL細胞内局在の変化がネクロプトーシスおよび心筋代謝に与える影響の検討a)生後3日齢のラット心室から単離した初代心筋細胞とH9c2心筋芽細胞を用いる。ネクロプトーシスを誘導するために、TNF (50 ng/ml)とカスパーゼ抑制薬(z-VAD-fmk: zVAD, 20uM)の同時投与(TNF/zVAD)を用いる。ネクロプトーシスの指標として、培養液中のLDH活性と細胞溶解液におけるRIP1とRIP3の結合レベル及びMLKLのリン酸化を用いる。さらにMLKL siRNAを用いたMLKL発現抑制により遮断されるか否かを評価する。TNF/zVAD刺激によるネクロプトーシスシグナル誘導がリン酸化MLKL(Ser368)の細胞内局在に与える影響を免疫染色もしくは過剰発現系を用いて解析する。MLKLの核移行シグナル阻害による細胞質型MLKL過剰発現および核外輸送シグナル阻害による核型MLKL過剰発現系を作成し、ネクロプトーシスとの関連を解析する。核型MLKL過剰発現系における遺伝子発現の変化をDNAアレイを用いて解析する。心不全動物モデルにおけるネクロプトーシスの役割拡張型心筋症マウスモデルを用いる。心エコーとコンダクタンスカテーテルで評価した左室形態及び左室機能を指標に代償期心不全と左室機能が低下した非代償期心不全の週齢を明確にする。in vivoにおけるネクロプトーシスの指標としてリン酸化MLKLとC9の免疫染色を用いる。心不全代償期と非代償期におけるリン酸化MLKLの細胞内局在、C9で検出したネクローシス、さらに核型MLKLによる制御される心筋代謝物を解析し、心不全の非代償化とネクロプトーシスの関連を検討する。mTORC1阻害薬とネクロプトーシス阻害薬(necrostatin-1)を投与し、心不全改善効果と下流の標的分子の関連性を明確にする。
基礎実験の実験が計画通りに遂行できずに物品費に残額がでた。次年度の物品費として使用したい。
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