研究課題
MLKL細胞内局在の変化がネクロプトーシスに与える影響の検討生後3日齢のラット心室から単離した初代心筋細胞とH9c2心筋芽細胞を用いてネクロプトーシス誘導刺激がMLKLの細胞内局在に与える影響を検討した。ネクロプトーシス誘導刺激として、TNF (50 ng/ml)とカスパーゼ抑制薬(z-VAD-fmk: zVAD, 20uM)の同時投与(TNF/zVAD)を用いた。ネクロプトーシスの指標として、培養液中のLDH活性と細胞溶解液におけるRIP1とRIP3の結合レベル及びMLKLのリン酸化を用いた。TNF/zVAD投与12時間後に有意なLDH増加が認められ、MLKL siRNAを用いたMLKL発現抑制により遮断された。TNF/zVAD投与前の時点では心筋細胞核分画にMLKLはわずかに検出されるのみであったが、TNF/zVAD投与6時間後に有意に増加した。MLKLのネクロプトーシスによる細胞死に先行した核移行は、ネクロプトーシスシグナル解析において代表的な細胞の一つであるヒト結腸腺癌細胞であるHT-29細胞においても観察された。心不全動物モデルにおけるネクロプトーシスの役割拡張型心筋症マウスモデルとしてδサルコグリカン欠損マウスを用いた。左室駆出率が低下した時期に心筋組織を採取した。免疫組織化学染色にてリン酸化MLKLの発現部位を同定するとともに定量的に解析した。δサルコグリカン欠損マウスの左室心筋では、対象であるWTマウスの左室心筋と比較してリン酸化MLKLの発現が増加していた。さらに前年度に拡張型心筋症57例の解析で得られた結果と同様に、心筋細胞の細胞質、介在板および核にリン酸化MLKLの発現亢進が認められ、定量的解析では核リン酸化MLKLの発現がδサルコグリカン欠損マウスで有意に増加していた。
3: やや遅れている
この二年間の研究で、心筋細胞においてネクロプトーシス誘導刺激がMLKL核移行を誘導すること、拡張型心筋症動物モデルそしてヒト拡張型心筋症において核のリン酸化MLKL発現増加は心機能低下や不良な予後と関連することが明らかとなった。一方、コロナ禍の影響で前年計画した詳細な解析までは期間内に終えることができなかった。
1. ネクロプトーシスにおけるMLKL核移行の意義TNF/zVAD刺激によるネクロプトーシスシグナル誘導がリン酸化MLKL(Ser368)の細胞内局在に与える影響を免疫染色もしくは過剰発現系を用いて解析する。in silico解析によりMLKLの核移行・排出を同定済みであり、MLKLの核移行シグナル阻害による細胞質型MLKL過剰発現および核外輸送シグナル阻害による核型MLKL過剰発現系を作成し、ネクロプトーシスとの関連を解析する。核型MLKL過剰発現系における遺伝子発現の変化をDNAアレイを用いて解析する。2. 心不全動物モデルにおけるネクロプトーシスの役割前年度の研究で核リン酸化MLKL発現亢進が明らかとなったδサルコグリカン欠損マウスを拡張型心筋症マウスモデルとして用いる。心エコーとコンダクタンスカテーテルで評価した左室形態及び左室機能を指標に代償期心不全と左室機能が低下した非代償期心不全の週齢を明確にする。in vivoにおけるネクロプトーシスの指標としてリン酸化MLKLとC9の免疫染色を用いる。心不全代償期と非代償期におけるリン酸化MLKLの細胞内局在、C9で検出したネクローシス、さらに核型MLKLによる制御される心筋代謝物を解析し、心不全の非代償化とネクロプトーシスの関連を検討する。mTORC1阻害薬とネクロプトーシス阻害薬(necrostatin-1)を投与し、心不全改善効果と下流の標的分子の関連性を明確にする。
コロナ禍における実験計画遅延と関連している、次年度に使用予定。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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