前年度までにPCRアレイで絞り込みを行った骨格筋由来のマイクロRNA(miRNA)候補であるmiR206、 miR133a、 miR1aの発現をDroplet Digital PCR (ddPCR)で検証した。Akt1 TGマウスの血中では候補miRNAの上昇が確認できたが、骨格筋での発現はコントロールマウスと有意差を認めなかった。その原因として、骨格筋サンプルには骨格筋細胞以外にも血管構成細胞や線維芽細胞などが含まれることが考えられたため、培養骨格筋細胞を用いて骨格筋由来miRNA候補の発現を検討した。Aktシグナルを活性化する作用のあるインスリン様成長因子(IGF-1)を培養骨格筋細胞に添加し、培養液中からエクソソームを抽出し、その中に含まれるmiRNAの発現量をddPCRで検討したところ、miR-206-3pと miR1aの有意な上昇が確認できた。 我々は以前にAkt1 TGマウスでは下肢虚血後の血流回復が促進することを報告しているため、骨格筋由来miRNA候補の血管新生能を血管内皮細胞(HUVEC)を用いて評価した。HUVECにmiR206を導入しHUVEC spheroidの血管新生を評価したところ、コントロールと比較して有意に血管新生が促進することが確認できた。また、miR206を導入したHUVECではHIF-1αやVEGF-Aなどの遺伝子発現の増加か認められた。 骨格筋由来miRNAの生体における血管新生能を評価するため、IGF-1を添加した培養骨格筋細胞の培養液中から抽出したエクソソームを下肢虚血マウスモデルに筋肉内注射し、血流改善の程度をレーザードップラーを用いて評価した。エクソソーム導入群で血流回復が促進される傾向にあったが、統計学的に有意差を認めなかった。
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