研究成果の概要 |
近年,骨格筋は様々な生理活性物質を分泌する内分泌臓器として機能することが明らかとなってきた.本研究では骨格筋肥大に伴い,エクソソームに内包され分泌されるマイクロRNA(miRNA)を同定し,その機能解析を試みた. 網羅的解析の結果,筋肥大マウスや筋肥大培養細胞においてmiR206とmiR1aの発現が有意に増加していることが明らかとなった.miR206を培養血管内皮細胞に取り込ませたところ,HIF-1やVEGF-Aなど遺伝子発現の増加とともに,血管新生が促進されることが確認できた.以上の結果から,骨格筋肥大に伴いエクソソームに内包され分泌されるmiR206は血管新生を促進する可能性が示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
心血管疾患患者に対する運動療法の有用性は確立し,臨床の現場においても心臓リハビリテーションとして広く普及してきているが,その有用性の分子機序は不明な点が多く残されている.運動により骨格筋から臓器保護的なホルモンが分泌され遠隔臓器に作用するというコンセプトを我々はこれまで様々なデータとして報告してきた.本研究で同定された骨格筋由来のエクソソームに内包され分泌されるマイクロRNAの同定は,そのコンセプトをさらに推し進めるものと考えられる.骨格筋から分泌されるマイクロRNAの更なる機能解析が今後の治療応用につながると考えられる.
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